ブライアン・ウィルソン

ブライアン・ウィルソンのレビュー・評価・感想

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ブライアン・ウィルソン
10

死の淵から這い上がってきた天才

60年代にビートルズと人気を競ったビーチボーイズのソングライター兼ベーシストであったブライアン・ウィルソン。爽快なファルセットを得意とし、Jazzコーラスグループであるフォーフレッシュメンから影響を受け美しいハーモニーに彩りを加えました。アイドル的な人気がある反面、ビートルズとの人気争いに苛まれていました。デビュー当初は陽気なサーフロックを中心にヒットを量産してきましたが、内省的な曲作りに段々と作風が変わっていきます。ヒット曲にシンフォニーの要素を取り込んだりと実験的で独創的な名曲を多く発表しました。しかしツアーの途中でステージ恐怖症から飛行機内でパニック症状を引き起こし、ライブ活動から遠ざかるようになりました。それからブライアンはスタジオに篭り、敏腕スタジオミュージシャンと共に楽曲製作に没頭するようになります。その中で「ペットサウンズ」というアルバムを発表。翳りがある中にも煌びやかなサウンドは英国や日本では受け入れられましたが、米国やメンバーには内省的で難解と不評の声もありました。ちなみにビートルズのポール・マッカートニーは、この作品から創作意欲と刺激を受けて「サージェントペッパーズ」を作ったとも言われています。ブライアンは次第にプレッシャーとドラッグによって精神を病んでいき、作品作りは大作になっていきます。その代表曲として「グッド・ヴァイブレーション」を発表しますが、この曲は元々録音時間が90時間もあり、そこからブライアンが3分半に編集した作品です。アメリカの歴史を一つのアルバムに表現しようとした幻の名作「スマイル」を製作途中に、遂にブライアンの心は破綻してしまいます。それからは壮絶な闘病人生を送るようになり、極度の神経衰弱に陥り自室に引きこもるようになりました。死の一歩手前まで病状が悪化したブライアンですが、80年代にソロアルバムを発表。そして90年代からは再び自分自身のバンドとサポートを得てツアー活動を再開し、コンスタントにアルバムも発表するようになりました。得意の切ないメロディは未だ顕在であり、特に日本人が好むアーティストだと思います。死ぬまでに一回は聞いてもらいたいです。