君は放課後、いくつ眠れる夜を越えた?
本作は「富士山さんは思春期」「猫のお寺の知恩さん」の作者が送る、北陸石川県のとある高校を舞台にした淡い恋物語。
不眠に悩みいつも不機嫌な主人公のガンタ(男子)は、ある時学校の天文台で寝ていたイサキ(女子)に偶然出会い、天文台を居場所にするために今は部員のいなくなった天文部に入部し活動を始める。その中で、不眠という共通の悩みを抱えているものの事情は全く異なる二人が、お互いの大切な部分を理解し惹かれ合っていく姿が淡々と描かれている。
この作者の作風でもある淡々とした感じに若干のもどかしさや物足りなさを感じなくはないが、その淡々さ加減がガンタ、イサキという二人の主人公を自然に表現しているようでもあり、この物語を独特の雰囲気のあるものにしている。
主人公を取り巻く友人・教師に個性が強い者が多く、物語にアクセントをつけている。天文部の顧問は、どこかで見たことがあるような…(「富士山さんは~」の保健の先生によく似ている)。個人的には天文部の先輩のシロマルさんが気になる。
物語中に出てくるイサキのいろいろな表情のアップ、思いがこもったセリフにも注目。イサキがどんな気持ちでそんな表情をしているのか、セリフの裏にはどんな思いが秘められているのか想像するのも、この漫画の楽しみの一つである。
高校時代に眠れぬ夜をいくつも越えた人にも、そうでもない人にもオススメの一作。