コーヒーをめぐる冒険

コーヒーをめぐる冒険のレビュー・評価・感想

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コーヒーをめぐる冒険
7

セピア色の人生

怠惰で情けなくてだらしの無いニコだが、心優しい性格であるというのを様々な人物との関わりを見ていてじんわりと感じた。
1日中ずっと飲めなかったコーヒーを、最後の場面でやっと飲めたわけだが、彼の人生の転機は訪れたのだろうか。

上手くいかない様々な人の人生を、第二次世界大戦とコーヒーを軸に描いていく。
怠惰で情けなくてだらしの無い主人公・ニコの心情も上手く表せていた。何もかもが上手くいくカラフルな人生なんて有り得ない。誰しも悩み躓きながら、華やかな生活を送っていそうに見える人だって水面下ではもがいている。
そんな人間の不器用で暗い人生の部分に焦点を当てた映画は案外、少しザラついた味のあるフィルムとセピア色の方がしっくりくると思った。もしもカラー映画だったら、この哀愁の漂う作品の雰囲気と登場人物の暗いバックグラウンドはチープなものに感じられたかもしれない。

人生薔薇色。御先真っ暗。人は人生を色で表現したりする。「君と出会ってから世界は色付いた」なんて陳腐でクサいセリフもあるけれど、もしかしたらそんなことも本当にありうるのかもしれないと、この映画を見て思った。モノクロで彩りの無い日々が突然、何かがきっかけでカラフルに見えてくるかもしれない。人生とはそんなものだ。