コーヒーをめぐる冒険

コーヒーをめぐる冒険

『コーヒーをめぐる冒険』(コーヒーをめぐるぼうけん)とは、2012年に公開されたドイツ映画。ヤン・オーレ・ゲルスター監督の長編デビュー作で、主演はトム・シリングが務める。モノクロ映像で切り取られた現代ベルリンを舞台に、人生の方向性を見失った青年ニコが、ただ一杯のコーヒーを求めて街をさまよう一日を描いた青春ドラマ兼ヒューマンコメディである。ジャズを基調とした音楽とモノクロ映像が織りなす都会的でメランコリックな雰囲気が特徴で、ヌーヴェルヴァーグやジム・ジャームッシュ作品を思わせる軽妙さと哀愁を併せ持つ。公開後は高い評価を受けており、ドイツ映画賞では作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞など6部門を受賞。ドイツ映画界の新たな才能として、ゲルスター監督の名を広く知らしめる一作となった。
大学を中退したことを父親に隠したまま怠惰に日々を送るニコは、恋人との別れや免許停止、金欠など次々と不運に見舞われた上、コーヒーが飲みたいのになかなかありつくことができない。ニコはコーヒーを探し求める一日を通して様々な人々との出会いと再会を経験し、自分自身や人生について改めて向き合うことになっていく。
一見すると「コーヒーが飲めないだけの話」だが、その実態は、20代後半という宙ぶらりんな時期に抱える焦燥感や孤独、そして大人になることへの戸惑いを、ユーモラスかつ繊細に描いた現代青春映画の秀作として語り継がれている。

hasechi1のレビュー・評価・感想

コーヒーをめぐる冒険
7

セピア色の人生

怠惰で情けなくてだらしの無いニコだが、心優しい性格であるというのを様々な人物との関わりを見ていてじんわりと感じた。
1日中ずっと飲めなかったコーヒーを、最後の場面でやっと飲めたわけだが、彼の人生の転機は訪れたのだろうか。

上手くいかない様々な人の人生を、第二次世界大戦とコーヒーを軸に描いていく。
怠惰で情けなくてだらしの無い主人公・ニコの心情も上手く表せていた。何もかもが上手くいくカラフルな人生なんて有り得ない。誰しも悩み躓きながら、華やかな生活を送っていそうに見える人だって水面下ではもがいている。
そんな人間の不器用で暗い人生の部分に焦点を当てた映画は案外、少しザラついた味のあるフィルムとセピア色の方がしっくりくると思った。もしもカラー映画だったら、この哀愁の漂う作品の雰囲気と登場人物の暗いバックグラウンドはチープなものに感じられたかもしれない。

人生薔薇色。御先真っ暗。人は人生を色で表現したりする。「君と出会ってから世界は色付いた」なんて陳腐でクサいセリフもあるけれど、もしかしたらそんなことも本当にありうるのかもしれないと、この映画を見て思った。モノクロで彩りの無い日々が突然、何かがきっかけでカラフルに見えてくるかもしれない。人生とはそんなものだ。