ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier)とは、イギリスのロンドンを拠点に活動する歌手、編曲家、作曲家、音楽プロデューサー、マルチプレイヤーである。1994年8月2日生まれ。
ジャズ、ア・カペラ、フォーク、クラシック、ゴスペル、ソウル、電子音楽、即興演奏などの多様な要素を融合させた独自の音楽性や、多重録音による緻密なハーモニーを最大の特徴としている。ライブパフォーマンスにおいては、複数の楽器を代わる代わる演奏するエネルギッシュなステージングに加え、観客を巧みに指揮して即興で合唱させる独自のスタイルで知られる。2011年よりYouTubeへの動画投稿を皮切りに知名度を上げ、最初の4枚のアルバムでそれぞれグラミー賞を受賞した初のイギリス人アーティストとなった。
音楽教師やヴァイオリニスト、指揮者として活動する母スージー・コリアー、同じくヴァイオリニストの祖父デレク・コリアーを持つ音楽一家に生まれ、ロンドン北部で育った。王立音楽アカデミーでジャズピアノを学ぶ傍ら、幼少期からピアノ、コントラバス、ギター、ドラムなどの様々な楽器を独学で習得し、作曲ソフトを用いた楽曲制作を開始した。少年時代には舞台や映画に出演し、ベンジャミン・ブリテンの作品などで高音パートを歌った経験が、のちの和声の使用法や理解に大きな影響を与えたとされる。
2011年から画面を分割したマルチスクリーン・レイアウトによる多重録音の演奏動画をYouTubeへ投稿し始め、2013年に発表したスティーヴィー・ワンダーの「Don't You Worry 'bout a Thing」のボーカルアレンジ動画がクインシー・ジョーンズの目に留まったことを機に世界的なキャリアを踏み出した。その後、MITメディアラボのベン・ブルームバーグと共同でリアルタイムの多重音声合成を可能にするボーカル用「ハーモナイザー」を開発し、独自のワンマン・ライブツアーを展開してモントルー・ジャズ・フェスティバルなどに出演した。
2016年、全曲の演奏、録音、アレンジ、プロデュースをロンドンの実家にある自室で1人で行ったデビュー・アルバム『イン・マイ・ルーム』をリリースし、翌年の第59回グラミー賞で2部門を受賞した。この時期、クラウドファンディングを通じて支援者から送られたメロディーにハーモニーを重ねる「#IHarmU」キャンペーンを展開し、ハービー・ハンコックやベン・フォールズなどの著名アーティストも参加して話題となった。また、映画『ボス・ベイビー』の音楽制作でハンス・ジマーと協力したほか、コールドプレイやSZA、BTSなどの著名なアーティストの楽曲にバッキング・ボーカルやプロデュースで参加している。
2018年からは、4巻50曲からなる大規模な音楽プロジェクト『ジェシー(Djesse)』シリーズを始動させた。同プロジェクトではそれまでのワンマンショースタイルからバンド形態へと移行し、世界各国のオーケストラや多種多様なジャンルのミュージシャンとコラボレーションを展開した。2018年発表の『ジェシー Vol. 1』、2019年の『ジェシー Vol. 2』、2020年の『ジェシー Vol. 3』は、それぞれグラミー賞の受賞やノミネートを果たし、高い評価を獲得した。2022年には『ジェシー Vol. 4』の収録曲「The Alien」の関与ではなく、自身のアルバム『ア・ヴュー・フロム・ザ・トップ・オブ・ザ・ワールド』の収録曲「The Alien」にてグラミー賞最優秀メタル・パフォーマンス賞を受賞したドリーム・シアターの動向や、コールドプレイのアルバムへの貢献を経て、2024年2月にシリーズの完結編となる『ジェシー Vol. 4』をリリースした。同作ではブランディ・カーライル、ショーン・メンデス、ジョン・レジェンドといった豪華ゲストを迎え、同年のグラミー賞授賞式ではジョニ・ミッチェルのステージへの出演も果たした。
2024年にはアーティストのオーロラと共に海洋および気候保護への意識を高める目的で北極海での演奏を行うなど、環境問題に対する活動にも参画した。2025年9月には、テイラー・ギターと共同開発したシグネチャー・モデルの5弦ギターと自身の歌声を中心に構成されたアルバム『ザ・ライト・フォー・デイズ (The Light for Days)』を発表し、同年10月にリリースしている。