空海-KU-KAI-美しき王妃の謎

空海-KU-KAI-美しき王妃の謎

『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(くうかい うつくしきおうひのなぞ、原題:妖猫伝、英題:Legend of the Demon Cat)とは、夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』を原作とした日中合作の2017年公開の歴史スペクタクル映画である。若き日の天才僧侶・空海と、後に偉大な詩人となる白楽天が、唐の都・長安を揺るがす怪事件に挑み、やがて歴史の闇に葬られた楊貴妃の死の真相へと迫っていく姿を圧倒的な映像美で描き出す。
物語は、遣唐使として長安へ渡った空海が、謎の病に苦しむ皇帝の最期に立ち会うことから始まる。王宮には人の言葉を話す不気味な黒猫の影があり、その後も黒猫は官僚の屋敷を襲うなど長安の街を恐怖に陥れていく。皇帝の死去を機に役職を辞した白楽天は、玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を綴る傑作詩「長恨歌」の執筆に執念を燃やしており、黒猫が遺した「長恨歌の物語は偽りだ」というメッセージに導かれるようにして、空海とともに30年前の歴史の紐解きを始める。
二人が突き止めた楊貴妃の最期は、史実に残る絞殺ではなく、あまりにも残酷な生き埋めであった。30年前の安史の乱の際、自らの保身に走った玄宗皇帝は、兵士たちの暴動を収めるために楊貴妃の命を差し出す決断を下す。しかし自らが悪者になることを恐れ、幻術師の提案した「針で一時的に仮死状態にし、後に救出する」という偽りの計画で楊貴妃を騙し、生きたまま石棺に葬ったのである。
このあまりに凄惨な裏切りの犠牲となった楊貴妃を心から慕っていたのが、若き幻術師の白龍だった。暗黒の石棺の中で絶望し絶命した貴妃の遺体を見つけた白龍は、彼女の美しさを保存するために自らの肉体を犠牲にし、最後は玄宗の飼い猫であった黒猫に魂を移して、裏切り者たちへの壮絶な復讐を開始した。これが長安を震撼させた呪いの正体だった。
空海と、白龍の兄弟子であり現在は高僧となった丹龍の導きにより、黒猫に宿る白龍の哀しき怨念が解かれたとき、その魂は白い鶴となって天へと昇っていった。白楽天は真実を知りながらも長恨歌を書き換えず、愛の儚さと美しさを詩に遺す。壮麗な唐の繁栄とその裏に潜む人間の業を描いた、切なくも美しい愛と復讐の物語である。
第30回東京国際映画祭では、記念すべきオープニングスペシャル作品として上映され、日中両国で大きな話題を呼んだ。

空海-KU-KAI-美しき王妃の謎のレビュー・評価・感想

空海-KU-KAI-美しき王妃の謎
8

圧倒的美麗なCGで描かれた悲しき王妃の物語

八世紀大唐。宮廷にて皇帝の最期を看取った空海は、その悲惨な最期が黒猫による呪いであることを突き止める。幼い皇帝の病死。妓楼に現れた姿なき黒猫。目玉を盗まれる近衛兵たち。黒猫の跡を追って事件を調査する空海と詩人の白楽天は、やがて一連の事件が、絶世の美女とうたわれた楊貴妃につながることを知る。
原作は夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。主演は染谷将太、中国の人気俳優ホアン・シュアンが勤め、ほかにも阿部寛などの豪華俳優陣をキャストに壮大な物語を描いております。

この映画の見どころと言ったらまず何よりも映像の美しさです。八世紀中国、日本が憧れ遣唐使を派遣し続けた大唐の整然とした街並み。燦然と輝く妓楼にて艶やかな舞を披露する娘たち。薄明りに浮かび上がる黒猫の怪しいシルエット。そして絶世の美女と謡われた楊貴妃と彼女が開いた酒池肉林の宴。筆者はテレビでこの作品を見たのだが、映画館で見なかったことを後悔する程に美しい映像の連続でした。
そしてもう一つの魅力は夢枕獏先生とチェン・カイコー監督が紡ぎだす物語の重厚さでしょう。楊貴妃の死にまつわる悲しい愛の物語。宮廷を恐怖に陥れた黒猫の悲しい過去。歴史好きにもお勧めできる一品です。