「歌詞が溶け込むメロディーとグルーヴのシンガー ”iri”」
iriは1994年生まれ。神奈川県出身のシンガーソングライターで、2016年8月にビクターよりアルバム「Groove it」でメジャーデビュー。ギターの弾き語りライブで10代の頃から音楽活動を重ねてきた彼女の曲には、HIPHOPやR&Bの色でビートを刻む印象も強く、クラブミュージックとして体感するものも多くある。そうしたリズムが活きている作詞にも、滑らかに英語が交わっていて、言葉の聴き心地はとても良い。
3rdアルバム「Shade」に収録され、ソニーウォークマンのCMソングにも起用された曲「Wonderland」でも、緩く弾けながら流れるシンセのリズムに乗せて歌う彼女の、音に溶け込む声に引き込まれる。歌詞に、焦燥感に駆られる言葉が並ぶラップのテンポを取り入れつつも、尖りなく、言葉と言葉を繋いで包み込んだような、圧迫を感じさせない歌声が耳に優しく響く。
一方で2024年1月にリリースされた「hug」は、すべてが日本語で作詞され、静かなピアノをベースにしたバラード楽曲となっている。目を閉じて聴き入りたくなる、深々と綴られ切なく心に触れてくる歌詞。そうした雰囲気を全面で感じとれると同時に、やはり言葉にリズムが在ることにも気付く。メロディーと歌詞を同時に制作するスタイルである彼女の楽曲にはその一体感があるのだ。
様々ある曲調のなかに尖りなく溶け込み、それでも想いは鮮明に伝えてくれる彼女の歌唱に浸ることのできる機会は多いだろう。絶えず発表されるコンサートツアーやタイアップされる楽曲からも、活動が精力的であることが判る。成長が楽しみなアーティストのひとりだ。