大金と命を懸けたデス・ゲーム
この作品は、所謂『デス・ゲーム』系の物語だ。 参加者達は何等かの理由により、大金を必要とする者達だ。 主人公で男子高校生の良真は、ある事件で両親を失い、生き残った妹は難病を患い、余命1年と宣告される。手術をすれば助かるが、その費用は10億円という高校生にはどうする事も出来ない金額だった。そんな良真の前にある美女が現れ、良真に「自ら望むモノの為に命を懸ける事はできるかい?」と訊ねる。良真が「出来る」と答えると、謎の美女は姿を消してしまった。妹の見舞いの帰り、良真は暴走したトラックに轢かれ死亡してしまう。その間際に見えたのは、背に翼を広げた先程の美女だった。死亡した筈の良真は、ある場所で目をさます。そこで自分の姿が美少女になっている事、他にも不安気な様子の美少女が4人いる事に気付く。そして5人の前には、「命を懸ける事が出来るか?」と訊ねた美女がいた。その美女は自らを『天使』と称し、『クロエル』と名乗った。クロエルによると、5人は不慮の事故で命を落としており、今いる場所は地獄の入口である『辺獄(リンボ)』だそうだ。この辺獄で『ゲェム』に勝利した者は、元の姿に蘇生し、賞金9999億円の中から、獲得した賞金をそっくり現世に持ち帰る事が出来る。参加者のうち1人は、「胡散臭い」と反論する。反論した1人に、クロエルは名を訊ねる。クロエルに訊ねられるまま名を答えると、その者の身体は崩れ、灰となり、身体の此処彼処が折れた男性の遺体となった。この状態をクロエルは、「この場所では本当の名を知られてはならない」と説明。残った4人は偽名を使う必要がある。其々偽名を決め、『ゲェム』がスタートする。『ゲェム』はいわば丁半賭博のような物で、基本ルールは以下になる。
・各プレイヤーが順に2つのサイコロを振って出た目の合計が奇数か偶数かを当て、的中すれば賭け金が2倍となるが、外れれば没収される。
・賭けはプレイヤーの手元にある2枚のメダルで行ない、「奇数」か「偶数」のどちらかを投入口へ投入し、サイコロを振り終わった後にどちらに賭けたかを宣言。
・初期資金としてプレイヤー全員に1000万円が貸し出されるが、命を懸けて『ゲェム』に参加してくれることに対する感謝なので返済する必要はないらしいが、資金が無くなったらゲェムオーバーとなる 。
・ゲェムの途中で1回だけ5000万円の資金の追加ができ、初期資金と同様返す必要はないが、代償としてクロエルを楽しませる為に利き手の指を全てもがれる恐怖と痛苦を捧げなければならない。生前の肉体には反映されないが、痛みは本物である。
・1度資金の追加をすると言ったら取り消す事は不可能
・『嘘から出た真』という言葉のとおり、どちらに賭けたかは他のプレイヤーには分からない為、『嘘の宣言』をする事も可能。その後何事もなければ掛け金は宣言通りの目に賭けたものとして処理される為、基本的には全員出た目を宣言する事となるが、逆の目を宣言しても構わず、そちらの方がいい場合もある。
・『嘘から出た真』に対応するルールで、『嘘の宣言』をしていると思ったプレイヤーに対して真偽を追及する事が出来る『アタック』だ。アタックを仕掛けられたら必ず真実を告白しなければならない。成功した場合は互いの賭け金の合計分を仕掛けられた側から貰う事が出来る。さらにその合計分と同額のボーナスをクロエルからもらえる。失敗した場合は、逆に仕掛けた側が仕掛けられた側に互いの賭け金の合計分を支払わなければならず、同額のボーナスも仕掛けられた側がもらう。基本的には相手が嘘をついてるかどうかは分からないのでアタックするのはリスクがあるが、自分が嘘をついている場合は正直に答え、相手に嘘をついていると思わせてアタックさせる方が確実である。なお、出た目と逆の目を宣言した者にアタックしてもかまわない。
・ゲェムの回数は全部で10回。10回戦終了までに必ずプレイヤーのうちの誰か1人の資金を0にして脱落させなければならない。資金が0になったプレイヤーはゲェムオーバーとなる。もし脱落者が出なかった場合は、プレイヤー全員がゲェムオーバーとなる為、生きて現世に帰る為には誰かを脱落させなくてはならない。これは、プレイヤー全員がリスクのあるアタックを避け、それを利用して毎回全員が賭けた目に関係なく出た目を宣言し続け全員がノーリスクで好きなだけ持ち金を増やし続けるのを防ぐためである。
・賭け金の上限は無く下限は1円からでも良い。
・『ゲェム』の途中から掲示板が現れ、何人がどの目に賭けたかを知る事が出来る。
正に地獄のような『ゲェム』の末、一人の脱落者を出し、残虐な処刑を終えた後に告げられたのは、この『ゲェム』は『予選』であると告げられる。本戦は『鬼ごっこ』。この『ゲェム』も過酷な騙し合いとなる。この『ゲェム』の結末は、残念ながら作者の急逝により、多くの読者の涙と共に未完となった。未完とはいえ、絵柄はとても可愛らしく、登場人物達の心理戦も見事だ。心理戦を主とした物語が好きな人は是非読んでみて欲しい。