serial experiments lain

serial experiments lainのレビュー・評価・感想

serial experiments lain
9

レインを好きになりましょう

この作品は、単なる二次元的な所謂フィクションという枠に留まらない、ある意味で非常に恐ろしい作品です。

ゲーム媒体とアニメ媒体という二つのメディアがミックスされる形で進行していったこの作品には、他に類を見ないような個性があります。
それは、双方のメディアが『serial experiments lain』というタイトルを冠しながら、実態としては異なる環境、展開が待ち受けているという点です。
他作品で頻繁に目にするような派生作品の様相ではなく、前述した“メディアミックス”という要素を遺憾なく発揮した形をとっています。複数の媒体で、且つ同時に展開するからこそできる設定。それがこの作品の独自性や、またそれに基づく物語やキャラクター作りに多大なる貢献をしているのです。

そして、この作品が単なる二次元的なものではないという私の主張。これは物語を追い、主人公である“岩倉玲音”の導きだした結論を知れば、きっと自ずと見えてくる筈です。
私個人としては、ゲーム版のLainを見た後、アニメ版の玲音を見届けることをお勧めいたします。

そういった複雑な魅力があるのも確かなのですが、しかしながら身構える必要はありません。
この作品には頭を空っぽにしていたとて楽しめる雰囲気的な要素や、年代特有の外連味と言うか、質素な上品さのようなものが漂っています。ただ制作陣が自己満足で難解にしただけの作品ではなく、明確な所謂芸術性のようなものが備わっています。故に個人差はあれど、むしろ個人差があるからこそ、響く人には全ての要素が魅力的に感じられる傑作となっています。
是非一緒に、レインを好きになりましょう。

serial experiments lain
10

私はこれ以上のアニメを知らない

全てが素晴らしいアニメ。90年代のアニメ特有の感傷的な雰囲気を存分に感じることが出来る。近未来をテーマにしたこの作品は独自の設定やシステムが細かく作り込まれていて思わず関心してしまうほど。97年に制作されたとはとても思えないデジタルな世界観は驚きを隠せない。これから先の未来にこのような出来事が実際に起こっててしまうのではないかとワクワクさせられる。ストーリーはミステリアスで最終話まで見てようやく世界観とキャラクターの謎を理解出来るので何度も最初から見直して考察をしたくなるアニメ。単調にも思われるシンプルなバックミュージック、主人公の静かな語り口調が絶妙な没入感がありレインの世界観にどっぷりとひたることが出来る。またセル画特有のノスタルジックでエモーショナルな素晴らしい作画は何度見てもうっとりとしてしまう。よくあるアニメにマンネリを感じてしまっている人、SFが好きな人には確実に「ハマる」アニメ。
私が今まで見てきた中で一番好きな作品であり、最高傑作のアニメであると自信を持って断言出来る。アニメ好きならぜひ一度は見て欲しい。この作品を好きだと感じるにしろ嫌いだと感じるにしろ、決して後悔はしないはず。

serial experiments lain
8

現代社会を先取りした90年代深夜アニメ

serial experiments lain(シリアルエクスペリメンツレイン)は、エヴァンゲリオンと同等かそれ以上に評価されるべきアニメであるが、広まらないのはlainが醜い人間とAI社会を忠実に表現しているからであろう。広まったら確実に社会は病む。その様な危なくも魅力的なコンテンツが、『serial experiments lain』である。

主人公は女子中学生の岩倉玲音(いわくられいん)。ある日クラスメイトが泣き出し、気にかける玲音。瑞城ありすは玲音に声をかけ、泣いていた樹莉に届いていたメールの事を聞き出す。玲音はメールのチェックは苦手だからと返すが、ありすは「メールくらい毎日チェックしなさいよ」とため息混じりに言う。しかしそのメールは渋谷で飛び降り自殺をしたD組の四方田千砂(よもだちさ)から届いたものだった。こういった奇怪な冒頭から玲音の日常が崩れていく。

ディープな用語を使い、玲音に新たなパソコンを与える父親。玲音に素っ気なく接する玲音の姉。普遍だが冷たい言葉を発する母親。クラブ・サイベリアに入り浸る小学生三人組。玲音の友人だが、変わっていく玲音に対して恐れを抱くありす。自分自身も変わっていきそれを阻止しようとするも、接触する人物達によって玲音の人との繋がりの価値観を見出す。

現代社会の歪みを98年に予知していたのか否か。