累-かさね-

『累-かさね-』とは、2013年10号から2018年17号まで『イブニング』(講談社)に連載された、松浦だるまによる青年漫画である。コミックスは全14巻刊行され、累計発行部数は2019年時点で250万部を突破した。
この作品は作者の松浦だるまの連載デビュー作である。
物語は主人公の醜い淵累(ふちかさね)が、伝説の女優と言われた美貌の母・淵透世(ふちすけよ)から受け継いだ口紅で、徐々に美しさへの欲望に飲み込まれていく姿を描いている。口紅を使って他人と顔を入れ替え、人々の嫌悪や蔑みを羨望に変えることを止められない累の狂気はホラーとも言える。
2015年には「第39回講談社漫画大賞」で一般部門にノミネートされ、同年「マンガ大賞2015」では第1位を獲得した。また「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」でも第9位を獲得した。2018年9月7日に実写映画が公開され、丹沢ニナ役を土屋太鳳、淵累役を芳根京子が演じた。映画は「ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭」で観客賞を受賞した。

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累-かさね-のレビュー・評価・感想

累-かさね-
9

実写映画化された「累 かさね」の原作漫画

口紅を塗ってキスすると顔が入れ替わるというオカルトチックなテーマながら、人間の弱さや愛おしさを丁寧に表現した作品です。主人公のかさねは、美しい大女優の母の子に生まれながら醜い顔を持ち、虐められながら育ちます。しかし、女優としての才能は他の追随を許さないほどでした。偶然母の形見の口紅の力を知り、美しい容姿を手に入れた彼女は後に女優としての人生をスタートさせます。この話の肝となるのは、口紅の効力は一定時間で消えてしまう事、相手も殺しても同じだという事です。顔を交換する相手と利害関係が一致するか、相手を監禁するしか顔を保つ方法がありません。美しい顔を手に入れたかさねは別人のように明るく自信満々に振る舞いますが、醜い顔のときはマスクをして背中を丸めて隠れるように生きています。すれ違う人の嫌悪の眼差し、逆に美しい時の羨望の眼差しに、人間の身勝手さを感じます。美しさと才能が揃ってこその、女優かさねですが、最終巻ではなんと元の醜い姿のまま舞台に立つ決意をします。その舞台は母の物語をそのまま再現したもの。「かさね」という名の通り母の人生を踏襲して生きてきたかさねが、最後に傷つくことを分かっていながら自分らしい道を歩もうとするところに鳥肌がたちます。たくさんの人の人生を狂わせてきたかさねは、ハッピーエンドとは言い難い終わりを迎えますが、最後の1ページに救いがあります。弱いからこそ愛着の湧く主人公でした。

累-かさね-
8

もし他人の顔と入れ替わることが出来たら、貴方はどうしますか?

世の中の美と醜に対する扱いの差をリアルに描いた衝撃の作品を貴方に。
母は美しいのに、なぜ私はこんなにも醜いの…?どうして醜い私が生きていて、美しい母が亡くなったの…?
小学生の累(かさね)の亡き母は絶世の美女と謳われた大女優でした。しかし累は似ても似つかないその顔の醜さから学校で酷いいじめにあっており、苦しい毎日を送っていました。しかしある出来事をきっかけにその日常が大きく変化していきます。
こちらの作品には、主人公である累の大女優としての栄光と破滅の物語が綴られています。決して明るい物語ではありませんが、世の中の美と醜に対するリアルな対応の格差やそれぞれが持つ心のあり方などが描かれていて、皮肉ですがその考え方や気持ちにどこか共感できる作品です。
物語の進み方なども魅力の一つで、1話ごとに流れが急に変わることもあり驚かされながら飽きずに最後まで読むことが出来ます。
また、物語に出てくる多くの謎や伏線を読み解きながら読むことも楽しみ方の1つで、考察が好きな方も楽しみながら読み進めることができます。
メッセージ性がとても強く、無意識に自分が持っている差別について考えさせられるので、美と醜について考えてる方や謎を解きながら物語を読みたい方にオススメです!

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