世界で一番、俺が○○

世界で一番、俺が○○

『世界で一番、俺が○○』(せかいでいちばん、おれがまるまる)とは、2016年より講談社の『イブニング』で連載を開始した、水城せとなによる漫画作品。水城にとって、青年誌初登場であり初の連載作品となった。柊吾、アッシュ、たろの仲良し幼馴染3人組がいつもの喫茶店で互いの不幸話に花を咲かせていると、エージェント773号を名乗る美女から「誰が一番不幸か競う」という勝負を持ちかけられる。優勝するとどんな願いも叶えられるというその誘いに疑心暗鬼だった3人だが、773号がその場で3人以外の全ての人の動きを止めるという超常現象を起こしたことで、彼女の話を信じ、勝負に身を投じていくことになる。連載先の『イブニング』では「ギリギリの人間関係をキレキレのセリフで描く」と紹介されており、漫画家のはるな檸檬も「本作は先の展開がつかず、予想が裏切られる怒涛の展開でおもしろい」と評している。

世界で一番、俺が○○のレビュー・評価・感想

世界で一番、俺が○○
9

一番不幸になれたら、あなたは何を願う?

天涯孤独で高額納税者の柊吾、愛されキャラで万年ニートのアッシュ、何かとパッとしないいわゆるイイヤツなたろちゃん。全くタイプは違うが、長年つるんできた幼馴染み3人組の前に不思議な女の子が現れた。「セカイ」という組織のエージェントを名乗る彼女に突然持ちかけられた「この中で一番不幸になった人の願いを何でも叶えます」というゲームによって、3人の関係性が大きく歪んでいく。各キャラクターの感情の動きが丁寧に描かれ、信頼し合っていた友人達への猜疑心、嫉妬心が露になっていく様は生々しい。
また柊吾が天涯孤独となるきっかけとなった凄惨な事件の裏側で、過去に行われていたとあるゲームが深く関わっていたことが明らかになる。ストーリーが進むにつれて徐々に伏線が回収され、息を呑むような展開が続くので次々と読み進めたくなる作品である。
職業柄、過去の事件が原因で人間不信である柊吾だが、いつしかナナミという存在に癒され、好意を抱くようになり始める。ナナミの方も柊吾に惹かれているようではあるが、住む世界の違う二人の恋の行方も見所だ。
幸不幸の価値基準は人によって違いはあり、人の感情もまた不確かでその時々によって大きく左右されるものなんだということをまざまざと感じさせられるが、この3人の深い絶望の先に待ち受けるのが、どうか「幸せ」であってほしいと願わずにいられない。