スワロウテイル / Swallowtail

スワロウテイル / Swallowtail

『スワロウテイル』とは、1996年に公開された岩井俊二監督の日本映画。舞台は架空の歴史をたどった日本の街。そこに暮らす移民達の姿を描いており、登場人物達が日本語、英語、中国語などを話す無国籍風な世界観となっている。映画と前後して、岩井俊二による同名の小説が発表されたほか、作中のバンドYEN TOWN BAND名義のサウンドトラック『MONTAGE』が発売された。

スワロウテイル / Swallowtailのレビュー・評価・感想

スワロウテイル / Swallowtail
8

独特の懐かしさを感じる世界観と切ないストーリー

今回紹介いたします「スワロウテイル」は1996年公開とだいぶ前の映画です。ですが、古さはまったく感じないのが不思議なところです。
いわゆるパラレルワールドの日本=円都(イェンタウン)に住む、外国人=円盗(イェンタウン)たちのお話です。
日本語と英語と中国語が入り混じったセリフが全編通して使われていて、役者さんたちみんな大変だったろうと思いますが、これがなんだか非常にリアルさを増す事になっています。
そしてヒロイン・グリコを演じるのはCHARAです。彼女を中心に、本編内でYEN TOWN BANDというバンドを組みます。
このバンド名で実際にデビューして「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」でブレイクしています。
主人公たち、特にイェンタウンたちはただただ幸せになりたいだけなのに、そのために自分のやりたくない事をしないと生きていけない。さっさと円を稼いで自国に帰れば大金持ちという夢のためにイェンタウンに集まってくる。
でも現実は思う通りに行かない。
幾重にもこんな切なさが折り重なって出来ている作品です。そんな中グリコの歌声だけは人々の心にほんの少しでも温かい灯をともすことが出来ます。
グリコに歌を歌わせたかったフェイホンはみんなにその事を知ってもらいたかったのかも知れません。

スワロウテイル / Swallowtail
10

何度見ても、時代が変わっても、何度も見たくなる作品。

舞台は日本の片隅で移民たちが様々な事情を持って暮らしている、無国籍で無法地帯な都市、yentown。
この街で暮らす人々は、日々消費されていく生活の中で、一攫千金、ジャパニーズマネーを稼ぐことに夢を馳せていた。
その街で生活していたが、母を亡くしてから身寄りがなく、名前もない少女(後にアゲハという名前をもらう)。ふとしたことから、そのアゲハを引き取ることになってしまった歌手を夢見ていた娼婦のグリコ。
二人が出会い心を許していく中、ある日、彼女たちの日常が一変するような殺人事件が起こってしまう。
その事件をきっかけに、一攫千金をつかめるかもしれないチャンスとその事件によりマフィアに追われる身となってしまうグリコ達。彼女たちの周りの人々も巻き込みながら、思いもよらないストーリー展開に飲み込まれていく。

本作は1996年に公開された、岩井俊二監督の映画。現金偽造、殺人、ドラッグ、セックスなどの問題描写が強く当時R指定だった作品。
戦後の日本の街のようでもあり、香港や東南アジアの片隅の街のようでもあり、気鋭の映画監督が描くyentownは、強い描写とともに当時、話題になった作品。
犯罪、貧困、社会問題、と並行して、夢、一筋の希望、愛すること、現実、そして失望。
何度見ても、時代が変わっても、何度も見たくなる作品。