マザーウォーター

マザーウォーターのレビュー・評価・感想

マザーウォーター
7

ゆったりとした時間の流れが感じられる、日常まったり系の映画

この映画は、京都の街を舞台に繰り広げられる、日常系の映画です。街の中にある、行きつけのお店の奥で流れている普段の日常生活が、少しずつ見えてくる、そんなストーリー展開になっています。

ご近所さんたちと関わりあうときの会話から伺える、街の景色が、京都の景色と重なり合って、いい意味で京都らしさを上手に伝えている映画だと思います。
京都の街の一角に存在する豆腐屋さん。カフェや銭湯、夜に営業するバーなど、それぞれのお店の店長たちが次第に顔見知りになっていく過程は、なぜかとてもほのぼのとしてしまいます。
人生の教訓らしき流れも、ストーリー内ではあるのですが、それが変に重たくならずに、ただ自然に流れる時間に任せている感じが、観ている人に安心感を与えているように見えます。
店長たちが、日々口にしている食事や、店内で出される料理など、日常には欠かせない要素を丁寧に描き出し、視聴者を魅了してくれます。
映像を観ているだけで、そのコーヒーの香りや、料理の味、お酒のほろ酔い感までが伝わってくるようで、登場人物たちが住む街の中にすぐに入れ込める、感情移入が楽な映画です。
京都の街が、いかに人間関係を大事にしているか、そんな視点から映画を観ると、「無理のない関係」の中にそれは存在するのかもしれない、ということが伝わってくるようでした。

マザーウォーター
9

楽観刹那主義のススメ

豆腐屋・バー・喫茶店・銭湯を営む人々が、互いに交わり生きる様が描かれています。台詞も、音楽も、無駄がない。水の流れる音、豆をとぐ音、グラスを磨く音、お酒を注ぐ音、パンをかじる音……様々な生活音がきれいに聞こえ、だんだん感覚が研ぎ澄まされていくのを感じます。
特別な出来事が起こるわけではない、なんてことのない日常も、毎日が違う一日。タカコが淹れるコーヒーと同じで、同じものは永遠に作れないというところに良さがある。
人生は、水のように流れているのだ。過去にとらわれたり、将来を案じて分析ばかりしたり、凝り固まっていても仕方がない。もっとシンプルに、自分の気持ちに正直に生きても良いのだと気づかされます。マコトがよく口にする「今日も機嫌よくやんなさいよ」には、そんな意味も含まれているように思いました。
自分が決めたことなら、どうなっても面白い。自分の気持ちに正直に動くことで、人は進化できるのです。赤ちゃんと同じで、大人にだって未来はある。けれど、先のことなんて誰にもわからない。「今」だけで充分なのだ。それは、まさに楽観刹那主義のススメ。ポプラは、その象徴なのかもしれません。家族、仕事、友人、悩みの種は色々とあるけれど、この映画のお陰で気持ちが救われた気がします。