心洗われる妖怪と少年の交流記
この作品は、夏目貴志という高校二年生の少年が祖母の遺した「友人帳」を巡って周囲の人々や妖怪たちと交流しながら日々を過ごしていく物語です。幼いころから妖怪と呼ばれる異形のものが見えた夏目は、天涯孤独な身の上とあいまって寂しい少年時代を過ごします。しかし、心優しい藤原夫妻に引き取られて引っ越してきた街で、ニャンコ先生という妖怪の封印を解いてしまいます。彼は夏目の祖母、夏目レイコと知り合いだったようで夏目の死後に友人帳をもらうという約束の下で用心棒となります。実はこの友人帳、名前を書かれた妖怪は持ち主の命令に逆らえないという恐ろしい品物だったのです。夏目はレイコの血を引く唯一のものとして妖怪たちに名前を返していく決心をします。多くの妖怪たちとの出会いと別れを繰り返すなかで、クラスメイトの西村、北本、同じように妖怪の見える田沼、祓い屋の名取や的場といったたくさんの人々と交流を深めていきます。人間と妖怪が相容れない存在であると分かっていても、寄り添おうとする繊細な心の動きをこの漫画は描き出しています。表紙からもわかるように、線の細い美しい絵柄で和風のモチーフの描き込みなど、一枚の絵としての鑑賞に堪えうる素晴らしい芸術作品です。