夏目友人帳 / Natsume's Book of Friends / 夏友帳

『夏目友人帳』とは、作者の緑川ゆきが『月刊LaLa』で2007年9月号から連載している作品であり、連載になる以前は読み切りとして隔月で掲載されていた。
子供の頃に両親を亡くし、親戚中をたらい回しにされてきた主人公・夏目貴志はあやかしを見ることの出来る祖母の力を受け継いでおり、そのために周りからはずっと疎まれて生きてきた。
高校生になり、藤原夫妻と出会うことでやっと心を救われた貴志は、祖母が勝負で負かしたあやかしたちの名を書き連ねた祖母の遺品『友人帳』にまつわる縁で出会った大妖怪・斑(まだら)の化身ニャンコ先生の力を借りて、人とあやかしをめぐる不思議な縁に振り回されながら祖母の意思をついであやかしたちに名を返していこうとする。
人やあやかしであることを区別せずに“縁”を大切にする貴志の生き方は、あやかしを人に害なすものと決めつける祓い屋(はらいや)・的場一門との間に幾度かのトラブルを生んできた。
しかし貴志の生き方を尊重してくれる祓い屋・名取周一との出会いが、貴志の運命を大きく変えていくことになる。
『夏目友人帳』は2008年にはアニメ化もされており、6作になるシリーズはすべて高い評価を受けて2018年には劇場版も公開された。

miach289のレビュー・評価・感想

夏目友人帳 / Natsume's Book of Friends / 夏友帳
9

心洗われる妖怪と少年の交流記

この作品は、夏目貴志という高校二年生の少年が祖母の遺した「友人帳」を巡って周囲の人々や妖怪たちと交流しながら日々を過ごしていく物語です。幼いころから妖怪と呼ばれる異形のものが見えた夏目は、天涯孤独な身の上とあいまって寂しい少年時代を過ごします。しかし、心優しい藤原夫妻に引き取られて引っ越してきた街で、ニャンコ先生という妖怪の封印を解いてしまいます。彼は夏目の祖母、夏目レイコと知り合いだったようで夏目の死後に友人帳をもらうという約束の下で用心棒となります。実はこの友人帳、名前を書かれた妖怪は持ち主の命令に逆らえないという恐ろしい品物だったのです。夏目はレイコの血を引く唯一のものとして妖怪たちに名前を返していく決心をします。多くの妖怪たちとの出会いと別れを繰り返すなかで、クラスメイトの西村、北本、同じように妖怪の見える田沼、祓い屋の名取や的場といったたくさんの人々と交流を深めていきます。人間と妖怪が相容れない存在であると分かっていても、寄り添おうとする繊細な心の動きをこの漫画は描き出しています。表紙からもわかるように、線の細い美しい絵柄で和風のモチーフの描き込みなど、一枚の絵としての鑑賞に堪えうる素晴らしい芸術作品です。