アクションよりも、人間ドラマを楽しもう!
映画化もされた話題作だが、いざ読もうと手にしたものの読み進められなかった人も多いかもしれない。
が、もし実際に映画を見てから漫画を読もうとしたという事は、そもそもその手のお話が好きなはず。
それを読まずに置くのはもったいない。
とはいえ、この作品のように緻密過ぎる絵柄はスピード感に欠けるものだ。
その意味ではこの作品もアクションシーンの迫力はイマイチな気がするのだが、話の流れとしては、実は殺しのシーンというのは本来そんなに派手なものではないよな〜と考えさせられる。
そしてその点は脳内補正に任せて、むしろ楽しみたいのは伝説の殺し屋、佐藤が他人を殺さずに一年大阪で過ごすための彼の涙ぐましい努力の部分だ。
殺さないどころか、一般人になり切ろうとわざと殴られたり、失敗したりを一瞬の計算でこなしている。
が、勘の良いものは違和感を持つ。
でも、我々一般人が考え付く範囲などはたかが知れているので、やはり本当の正体はとりあえず周囲には基本的にはバレていない。
その当たりのギャップが、緻密な絵柄ゆえに真面目なのにギャグ!の構造を強調していて笑いを誘うのだ。
佐藤の生来の真面目さは、少なくとも普通の生活では良い方に彼と彼の周囲の人々を巻き込んでいく。
本人には気づかれないように、佐藤はなんだかんだとずっと周囲の者を守り続けている。好き嫌いに関係なく、「明日もその人と会えたらいい」程度のニュートラルな気持ちで、それでも自分が関わる者の平穏な日々を守るのは簡単ではない。
そのために、当事者が知らない所でまた恐ろしいほどの非日常を佐藤は繰り返すことになる。
そんな日々の中でも、佐藤が周りの人々との絆を深めている様こそが、この作品の見どころだ。
絵柄は1巻も読めれば慣れるもの。
ぜひこのドラマを追いかけてみていただきたい。