オペラ座の怪人

オペラ座の怪人

『オペラ座の怪人』(原題:Le Fantôme de l'Opéra)は、1909年にフランスの作家ガストン・ルルーによって発表されたゴシック小説、及びそれを原作とした作品群。物語の舞台となるのは、19世紀後半のパリ・オペラ座。醜い顔を仮面で隠しオペラ座の地下に潜む怪人(ファントム)と、美しいソプラノ歌手クリスティーヌの悲恋が描かれる。世界的に有名な作品で、度々映画化・舞台化されている。

Ko_Suke_pokeのレビュー・評価・感想

オペラ座の怪人
9

最も切ない三角関係

本作は題名にもある通り「オペラ座」が主な舞台であるため、きらびやかな演出や俳優たちによる歌唱力に圧倒されます。しかし、ストーリーはそれとは対照的に暗い印象を受け、クリスティーヌとラウル、怪人の三角関係は何度観ても切ない気持ちでいっぱいになります。ラウルは、新人のバレエダンサーでのちにプリマドンナの代役を務めるクリスティーヌの幼なじみであり、とても紳士的な男性です。一方、怪人は顔に大やけどを負い、それによる壮絶な子供時代を送った不幸な男性です。彼はオペラ座をすみかにし、愛するクリスティーヌをプリマドンナにするためには人殺しも厭わないのです。完全に怪人の人格は破綻していますが、クリスティーヌへの愛は本物です。客観的に見れば、もしクリスティーヌの立場なら誰もがラウルを選ぶことと思います。ストーリーでも、クリスティーヌとラウルは結ばれ、幸せな家庭を築いていきます。しかし、この作品は必ずと言って良いほど、怪人に肩入れしてしまうようにストーリーが構成されています。人殺しで、オペラ座の地下にクリスティーヌを連れ去り、無理やり結婚させようとまでする怪人ですが、クリスティーヌ亡き後も墓にバラの花を送り続ける彼に、少しでも幸せが訪れてほしいと祈ってしまう名作です。