蜘蛛の糸で繋がる歴史!スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームに込められたシリーズへの敬意
2021年12月15日の各国の最速公開から遅れること約3週間を経て、ようやく日本でも公開された本作は『スパイダーマン:ホームカミング(2017年)』、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019)』に続く3作目となる作品ですが、その本質は2002~2007年に展開したサム・ライミ監督が手掛けた映画『スパイダーマン』3作の続編、そして2012~2014年に展開されたマーク・ウェブ監督が手掛けた『アメイジング・スパイダーマン』2作の続編とも言えるものでした。
前述した2シリーズは様々な事情からその続編が作られる可能性は限りなくゼロであり、『マーベル・シネマティック・ユニバース』(以下、『MCU』)にて新生したスパイダーマンの活躍に多くの人が期待を寄せていましたが、ここに来てなんと最新作の過去の2シリーズの世界から現れたヴィランが登場!まさかのオリジナルキャストと共に復活した懐かしのヴィラン達にファンは騒然となりました。
映画の内容は他世界より呼び寄せてしまったヴィラン達を本作の主役スパイダーマンであるピーター・パーカー(トム・ホランド)が、元の世界に戻す前に更生させようとするのですが、それぞれが複雑なバックボーンや個性を持つヴィラン達が互いに及ぼす影響ややり取りは旧作ファンを喜ばせ、時に唸らせてくれました。まるで彼らの前に拓かれた新たな可能性の道にファンならば誰もが上映中に心躍ったのではないでしょうか。
そして映画の後半、予想を遥かに超えた素晴らしい展開が視聴者を待ち受けます。彼らヴィランが居た世界より来たるそれぞれの世界のスパイダーマン達……並び立つ3人のピーター・パーカーの奇跡のような映像は本作に至るまでのスパイダーマンシリーズを追い掛け続けてきた人たちには言葉に出来ないほどの感動があったのではないでしょうか。
彼らがそれぞれの世界で救えなかったヴィラン、恋人との悲しい過去、今も抱く過ちへの念……再びそう言ったものに対峙する機会が与えられた本作はまさにサム・ライミ版の『4』であり、マーク・ウェブ版の『3』であったとも言えます。これまで映画史におけるスパイダーマンの歴史を築き上げて来た2作への敬意を払い、その力を借りつつ、今のスパイダーマンを未来に繋げていくその美しい繋がりは、さながら芸術的に編み上げられた蜘蛛の糸のようでもあったのです。
本作は『MCU』として27作目にあたる作品ですが、もしこれから視聴するのであれば是非映画の歴史に名を刻んだ2つのスパイダーマンシリーズを視聴した上で臨まれる事を強くオススメします。