絶望を希望に変える稀有な創作物
絶望を希望に変える漫画はそう多くはない。創作物によって人は感情をかき立てられることはあるが、その衝撃は一瞬のものだ。きっと明日には別のことに感情を消費している。
でも誰にでも自分のこころに「巣食う」ような作品が一つはある。こころに住み着いてしまって、離れないような作品が、どうしても忘れられない記憶のように誰にでもあるのだ。
そして、多くの人にとって「進撃の巨人」という漫画がまさにそれだと思っている。世界的にも名を馳せたこの漫画には熱狂的なファンが付いている。なぜここまで愛されているのか?それは、この物語が人の価値観が真逆に転じてしまう漫画だからだ。悪だと思っていたものが正義となり、絶望だと思っていたものが希望になる。登場人物たちはそれぞれの正義を信じていながら、迷っている。迷い、考え、自分の正義について命を燃やしている。そして読者も彼ら同様に迷い、今までの既存の価値観を揺れ動かされる。
フィクションの彼らは時に本当に生きている人間よりも、読者に深くコミットする。親よりも友達よりも深く、こころに入り込み人を揺れ動かす。この作品を見て幸せにはならないだろう。ハッピーな話ではないし、気持ち悪いと目を背ける人もいるはずだ。それでもこの作品から目が離せない読者が大勢いるのは、この作品の持つ圧倒的なパワーなのだろう。生きるということはパワーなのだ。読者はこの漫画を通して自分の生きてきた過去を見つめることになる。
正義とは何か?自由とは?強さとは?孤独とは?仲間とは?悪とは?愛とは?
そんな、学校では教えてくれなかったことが「進撃の巨人」には描かれている。