ノマドランド

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ノマドランド
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【想いは永遠、物質社会の先にあるものを見据えよう】映画「ノマドランド」のレビュー

原作は「ノマド 漂流する高齢労働者たち」
キャストは主人公ともう一人のノマドを除き全員現地人。登場するノマドは現役ノマドです。
ノマドランドはそんな現役ノマドの現状を映したロードムービー。

夫に先立たれ故郷が廃れ住めなくなった主人公ファーンは、思い出の品など最低限の荷物をキャンピングカーに載せ、
ノマドとして生きています。
ノマドとは「現代の遊牧民」という意味。
遊牧民と聞けば聞こえはいいですが豊かと感じることは少ないのです。
どんな立場であろうが必要なのはお金なのでその日暮らしで仕事をこなします。
時にはアマゾンの倉庫で働いたり、ファーストフードで食に触れたり、建設現場で重労働をしたり。
寝泊りはすべてキャンピングカー。
自分の体もキャンピングカーも、調子が悪くなったらまず自分で何とかしなけれなばりません。
不便なことが多いけれど、物質至上主義の流れに異議を唱え自然と共存していくことを望んだノマド達。
アメリカの大自然をバックに映すノマドの現状はけっして不幸なものではないことを教えてくれます。

中盤ファーンは大事にしていた思い出の品を壊されてしまいますが、自力で直し気分を持ち直します。
しばらく転々とノマド生活をしていくうちに物を大切にしていくことに疑問を抱くのです。

物語のラストは廃れてしまった故郷に戻り過去を思い出します。
そして過去に比重を置きすぎた現状に決別をし、今まで大事に残していた思い出の品を処分します。
物ではなく想いを大事にしてノマドを続けていくことにしたのです。
この作品で訴えていることは物質社会の先にあるもの……【精神的な幸福】
目に見えないものこそ大切であると教えてくれます。
ネットショップのように自分が動かなくても解決できる便利なサービスが増える一方、心を疎かにしてしまう現代に警鐘を鳴らしているのかもしれません。

セリフが少なく情景や間合いがとても心に響く作品です。
この機会に大切な人と一緒に劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。