スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム / Spider-Man: No Way Home

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(Spider-Man: No Way Home)とは、アメリカで人気のマーベルコミック『スパイダーマン』をベースとした、2021年公開のスーパーヒーロー映画である。
本作のスパイダーマン映画は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)製作作品としては3作品目となる。
前作『スパーダーマン:ファー・フロム・ホーム』で倒した敵・ミステリオにより、正体をばらされ世間を騒がせることとなったピーター(スパイダーマン)。周りの人間を混乱に巻き込んでしまい追い詰められたピーターは、何とかこの事態を解決するため友人のドクター・ストレンジに助けを求める。ストレンジは人々からスパイダーマンの正体に関する記憶を消し去るという禁断の魔術を使うが、その魔術の失敗によって多次元宇宙の扉が開いてしまい、ニューヨークの街に様々なヴィランが押し寄せて、街の人々に危機が迫る。
シリーズの集大成とも言える壮大な物語が描かれる本作は、日本のみならず世界中で大ヒットを記録した。

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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム / Spider-Man: No Way Home
10

3人の青春がせつない

観れば周囲の評価が高いのも頷けます。そして絶対的に言えることは見る前には必ずサム・ライミ版以降の各スパイダーマンシリーズは観ておくに限るということ。それがあるとないとでこの映画のピークポイントのいくつかが報われないことになります。
MCU版スパイダーマン前2作はファミリーで親しやすい映画=重くなりすぎないところが好きでした。今作は重くもなりますがそれが絶望的すぎず、ファミリーでもその重さを含めて楽しめる良バランスの映画でした。
ヒーローの苦悩といえばサム・ライミ版、アメージング版がありますが、今作では彼らに対する救済がしっかり用意されていて、その仕掛けもなかなか涙腺を刺激してくれるものとなっています。多くの方の評価はここだろうと思います。
マルチバースの世界観の中で運命づけられた自分の「物語」と戦うことになるのが本作のテーマですが、それでもその分岐点の中で、トムが演じるスパイダーマンもまた、大切な存在を失うことになります。そこがより大きく逃れがたい宿命としてのしかかりつつ、「おおいなる力を持つ者は~」という名セリフとともにスパイディーをホンモノに成長させます。
物語の形式としては美しいのですが、そこはちょっと、と思う面もあります。形式美をとったことでなにが「運命」でなにが「自助努力」なのかがもやっとした瞬間ではありました。
ただ、ストーリーを支えている仲間3人の描写が素敵すぎます。ホムカミからずっと3人のハイスクール時代をわきあいあいと見てきたところから、大学進学によって青春の区切りを迎えるドラマ。スパイダーマンというメインディッシュに添えられたサイドドラマだからこそ、嫌味を感じず自然と感情移入できた面があり、その最後はなかなかにせつない味わいを残してくれます。