3人の青春がせつない
観れば周囲の評価が高いのも頷けます。そして絶対的に言えることは見る前には必ずサム・ライミ版以降の各スパイダーマンシリーズは観ておくに限るということ。それがあるとないとでこの映画のピークポイントのいくつかが報われないことになります。
MCU版スパイダーマン前2作はファミリーで親しやすい映画=重くなりすぎないところが好きでした。今作は重くもなりますがそれが絶望的すぎず、ファミリーでもその重さを含めて楽しめる良バランスの映画でした。
ヒーローの苦悩といえばサム・ライミ版、アメージング版がありますが、今作では彼らに対する救済がしっかり用意されていて、その仕掛けもなかなか涙腺を刺激してくれるものとなっています。多くの方の評価はここだろうと思います。
マルチバースの世界観の中で運命づけられた自分の「物語」と戦うことになるのが本作のテーマですが、それでもその分岐点の中で、トムが演じるスパイダーマンもまた、大切な存在を失うことになります。そこがより大きく逃れがたい宿命としてのしかかりつつ、「おおいなる力を持つ者は~」という名セリフとともにスパイディーをホンモノに成長させます。
物語の形式としては美しいのですが、そこはちょっと、と思う面もあります。形式美をとったことでなにが「運命」でなにが「自助努力」なのかがもやっとした瞬間ではありました。
ただ、ストーリーを支えている仲間3人の描写が素敵すぎます。ホムカミからずっと3人のハイスクール時代をわきあいあいと見てきたところから、大学進学によって青春の区切りを迎えるドラマ。スパイダーマンというメインディッシュに添えられたサイドドラマだからこそ、嫌味を感じず自然と感情移入できた面があり、その最後はなかなかにせつない味わいを残してくれます。