ただの人食い巨人のマンガにあらず!
話の内容を知らなくても一度は聞いたことのあるタイトルかと思います。
しかし、このマンガの真の凄さは単純な人類と巨人が戦う物語ではない!という点。
(以下、ネタバレを含みます)
主人公は巨人を憎んでいるのに、なぜか巨人化する能力を持っていた?
巨人の正体は元々人間だった?
かつての仲間が次々と裏切って敵になった?
実は人間同士が戦って殺し合って捕食していた?
「進撃の巨人」とは巨人が進撃してくるという意味じゃなく、主人公が引き継いだ巨人の名前だった?
畳みかける仕掛けのように、綿密に張り巡らされた伏線と逆転劇。
ダイナミックなアクションシーン。
もちろん、それだけでも十分おもしろいです。
しかし、物語を通じて読者に訴えかけるメッセージは「完全悪など存在しない」「立ち位置が変われば自分たちが悪になりうる」……そういった、現代社会にも通ずる概念が散りばめられている点です。
特に興味深いエピソードは、暗に毒親を思わせる描写。
我が子に対して過剰に期待を寄せ、己の正義でもって洗脳教育し、子供の意志など全く聞き入れようとしない両親。
自我を奪われた子供は、やがて親の期待に応えなければならない強迫観念に捕らわれます。
そして思うように成果が得られなければ、子供は自分自身を責めてしまう……。
実際、幼少の頃に上記のような体験をなさった人もいるのではないでしょうか?
こんな現代社会の課題でもあるエピソードが無数に描かれ、私たち読者を翻弄するのです。
本当に恐ろしい悪魔は、人間の心に潜んでいる。
最高のエンターテイメントと共にある最恐の人間ドラマを、ぜひ味わってみてください。