ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とは、2000年公開のデンマーク映画。監督はラース・フォン・トリアー。世界的に知られる歌手・作曲家のビョークが主演を務めた事で話題になった。どこまでも救いようの無いストーリー展開とショッキングなラストも相まって、公開後10年以上経った今も尚「後味悪い系、鬱映画」の代表として君臨し続けている。また、作中の楽曲もビョークが手掛けており、その中でも「I've Seen It All」はゴールデングローブ賞、アカデミー賞ともにノミネートされるなど高評価を得た。

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ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
9

彼女の見ていた世界

本作は2000年に、ラース・フォン・トリアー監督により製作されたデンマークの映画だ。
主演にアイスランドのシンガーソングライター・ビョークを据え、一風変わったミュージカル調の作品に仕立て上げている。
撮影もまた変わったもので、手持ちのカメラ撮影にこだわっているため、まるでドキュメンタリーを観ているような錯覚に捉われる。
映画の主人公は、息子の目の病気を治すため昼夜問わず働く移民の女性。
だが、彼女もまた視力を失い始めており、周囲の人間に助けられ、空想と歌によって支えられて生きている。
その日常は淡々としているが、間延びせずに進む。空想を始めると景色の色味が鮮やかになるところも魅力だ。
のびやかな歌声と音楽によって紡がれる主人公の心情は、観ている人へ深い思慮を促す。
しかし、物語はけして明るいだけではない。目を覆いたくなるような現実が次々と主人公を襲う。
友人の裏切り、無実の逃亡、死への107歩が主人公だけでなく、観客の感情をも揺さぶるだろう。
それでも歌い続ける主人公と、彼女を見守る人間達の心遣いは美しく、それでいて物悲しい。
救われず報われない一人の生き方が、何を考え、語り掛けているのか、それを感じ取れれば、彼女の見ていた世界が見えてくるかもしれない。