B.B.クイーンズのシンガー、ブレイク前夜のソロデビューアルバム
TVアニメ『ちびまる子ちゃん』の初代EDテーマ曲として1990年にリリースされ、2021年に至るまで30年以上にわたり様々な歌手に歌い継がれ親しまれてきた国民的アニメソング、『おどるポンポコリン』。
B.B.クイーンズのメンバーとして、サングラスにしゃがれた声でシャウトする近藤房之助の隣で、鼻にかかった声でコミカルに歌い上げていたのが坪倉唯子だ。80〜90年代には数々のスタジオワークでコーラスシンガーとして名を連ね、また中島みゆきや福山雅治などをはじめとした数多くのライブでバックコーラスとして参加しておりJ-POP黄金期を縁の下から支えた1人である。
そんな彼女がB.B.クイーンズとして大ブレイクを飛ばす前、1986年にソロシンガーとしてリリースしたのがデビューアルバム『ALWAYS IN LOVE』だ。作曲には坪倉本人以外にも80年代以降の歌謡曲やアイドルソングの大御所、林哲司や後藤次利らが参加し、ロックやバラード調の曲をはじめとしてシティポップやブラコンとも受け取れるダンサブルな楽曲もありバラエティに富んだ仕上がりになっている。坪倉本来のボーカルははややハスキーがかったソウルフルな質感のためミディアムなバラードやダンサブルな楽曲にも負けず相性が良い。
最もインパクトがある楽曲は隠れたシティポップの名曲、2曲目の『一瞬夜伽伴侶(つかのまよとぎびと)』だ。林哲司のペンによるビートがはっきりしたブラコン色が強い曲。クセになりそうな打ち込みのリフレインに加えて編曲・ギターで参加している鳥山雄司によるシャープなカッティングギターが気持ちいい。
6曲目の『熱帯夜 -DANCIN' IN THE MIDDLE OF NIGHT-』はダンサブルで坪倉のパワフルボーカルが生きるポップス。こちらも林哲司作曲に鳥山雄司が編曲で、ギターソロなど多彩な音色で盛り上げる。
アルバム最後の10曲目『ALWAYS IN LOVE -愛さずにいられない-』はいかにも後藤次利作・編曲というメロウかついなたさのあるシティポップで、そこに併せて抑制の効いた切なげなボーカルが良い。
実際のところこのアルバムのセールス面は奮わなかったようだが、知る人ぞ知るシンガーとして、紹介した曲・アルバム以外にも良い曲が多いのでぜひ他の曲もチェックしてみてほしい。