空想世界だと感じさせない緻密なストーリー
"2009年の連載開始から注目を浴び、アニメ化を皮切りに社会現象まで起こした『進撃の巨人』。
本作はファンタジー漫画の作風でありながら、登場人物の心情や生活様式などが非常にリアリティを感じさせ、空想物語を見ているような気分にはならないという珍しい作品だ。
特に主人公であるエレン・イエーガーは物語の序盤で巨人化という能力に目覚めるが、彼自身はそこまで恵まれた主人公ではない。
能力があるからといって幸福なわけでもなく、壁外と壁内の戦争で使われる兵器にすぎない。
彼を取り巻く登場人物たちも心理描写が巧みで、かつ、彼らの行動原理には緻密な伏線が張られている。
彼らを見ていると、戦う理由はたいそうな信念ばかりではないことを教えられる。
言ってしまえばそれはエゴで、各々のエゴのために戦っていると言える。
見るものによっては理解できない人物もいるだろう。だが、必ず誰かの言葉があなたの心にも突き刺さるだろう。
そうして世界が小さくばらけていくことが「人」という生き物の生き様のようで、進撃の巨人は人間の真理を説いている作品だとも言える。
コミックの序盤は作者の絵がまだ拙く、キャラクターの描き分けができていない。また、時系列もわかりにくい部分があるので、アニメから入るのをおすすめする。