映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ

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映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ
9

終盤で感動させる

公開当時は「子どもだけでなく大人も感動する映画」として評価されていたが、たしかにそういう面がある。キャラクターが絵本の世界に取り込まれて、さまざまな物語(アラビアン・ナイトなど)の世界を体験していく…という全体的な流れはいかにも子ども向けなのだが、終盤に差し掛かって「ひみつのコ」の正体が判明したところから、大人も引き込まれる展開になる。もともと「すみっコぐらし」は、それぞれのキャラクターに背景があって大人も共感しながら楽しめるところがあるのだが、「ひみつのコ」の正体はそんなキャラクターたちのなかにあってもとくに「寂しい」ものだ。そしてそんな寂しい背景をもつ「ひみつのコ」に共感し、お友達になりながら、にもかかわらず最後は絵本の世界から脱出するためお別れしなければならなくなったキャラクターたちの悲壮感にまず打たれる。しかし、本当に感動的なのはその後、映画の本当に終わりのところで、現実の世界に戻ったキャラクターたちは、「ひみつのコ」をひとりにさせないために、ある仕掛けを施すのだ。心温まるとともに、それぞれが事情を抱えるキャラクターたちだからこそその優しさに至るのだろう、ということに思いを馳せて大いに泣ける作品になっている。