夢売るふたり

夢売るふたり

『夢売るふたり』(ゆめうるふたり)とは、2012年9月8日に公開された日本映画。西川美和が監督・脚本を手掛け、松たか子と阿部サダヲが夫婦役で主演を務めた作品である(R15+指定)。
東京で小料理屋「いちざわ」を営んでいた市澤里子と貫也の夫婦は、開店5周年の日に店内からの火災により店を全焼させてしまう。絶望し酒に溺れる夫・貫也が、店の元常連客である女性と一夜を共にして金を得たことをきっかけに、妻の里子は夫を男に不器用な女性たちの心の隙間に忍び込ませて資金を騙し取る結婚詐欺を計画する。夫婦は店を再建するという共通の夢に向かって結婚詐欺を繰り返していくが、次第に夫婦関係やターゲットとなった女性たちの運命が複雑に狂い始めていく。
第37回トロント国際映画祭のスペシャル・プレゼンテーション部門へ正式出品されたほか、第36回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞(松たか子)を受賞するなど高く評価された。

captainjack0047のレビュー・評価・感想

夢売るふたり
9

こんなに引き込まれてしまうとは…

夫婦で手に入れた念願の小料理屋で、いきいきと働く2人の姿。時間としては僅かだったが、その描写は二人で店を開くまでの苦労や、火事でお店を失ったことによる絶望感をより鮮明に感じさせるには十分であった。その後生活のためすぐに仕事を始める妻に対し、いつまでもウジウジしている夫の姿には妙にリアリティを感じたものだ。
夫を支えるため毎日必死に働く妻だったが、自暴自棄になった夫が店の常連だった女性と浮気をし、更にお金を受け取って帰宅。そこから結婚詐欺を思いつき、夫婦の歯車は狂い始める…。

夫の浮気に気づいたときの松たか子の演技がとにかく素晴らしい。美しい容姿から隠しきれない真っ黒な感情がガツンと伝わってきて、一気に引き込まれた。結婚詐欺をはたらく相手として多くの女性が出てくるのだか、どの人物も大変魅力的で映画の世界にどんどんのめり込んでしまった。また、結婚詐欺をするのがスラッとしたイケメンなどではなく阿部サダヲと言う点も非常に良かった。心を掴まれて相手を信頼しお金を渡してしまう…そのような行動を取ってしまう女性たちに対し、不思議なことに"ちょっとわかるかも"という感情が芽生えるのだ。そしてやはり、何より松たか子が格別だった。夫婦で協力して結婚詐欺をしているのにどんどんすれ違っていく二人…そこで生まれる様々な感情を見事に表現し、現実的ではない物語を現実的に感じさせてしまう様は圧巻である。
家族で楽しく見られる映画ではないが、多くの人にじっくり味わってほしい作品である。