凡人であること
私がインパクトを受けた話(『ブルーピリオド』第1話より)を紹介します。
これは、凡人が美大を目指す話です。
主人公の矢口矢虎は、金髪で友達と朝まで飲み歩く「不良」ですが成績優秀で周りの空気を読む「優等生」でもあります。何事もそつなくこなすからこそ、生きる目標を見出す事が出来ませんでした。
そんなある日、先輩の描いた絵に出会います。そこにあったのは大きなキャンパスに描かれた緑色の女性で、矢虎は驚くと同時に「なんで緑色なんだろう?」と疑問に思います。
翌朝、森先輩と出会います。彼女はショートカットの小柄な女子で、身長の二倍はある大きな荷物を持っていました。
矢虎は思わず手伝い、そこで緑の女性を描いたのが森先輩だと知ります。
話をしているうち矢虎は、自分と重ねてしまいます。
「先輩は、スゴイっすね 才能があって羨ましいです」。矢虎にとっては才能の塊に見える森先輩ですが、彼女は「才能なんかないよ 絵のこと考えてる時間が他の人より多いだけ」、「手放しに才能って言われると何もやってないって言われてるみたい」と返事します。
それを聞いた矢虎は、話してみる事にしました。
友達と飲み歩き夜が明けた時に見た渋谷が青かったこと。しかしそれは、矢虎にしか分からないことでした。
矢虎にしか見えない景色があるという事は、矢虎にしか描けない絵があるということです。
美術の時間に「私の好きな景色」という課題が出され、矢虎は森先輩に言われた事を思い出します。
青い渋谷の絵を描きました。絵を褒められ、その時初めて人と会話が出来た気がしました。
凡人だから、思うがまま絵に気持ちをぶつけられる。
凡人だから、好きなことにのめり込める。
凡人だから、努力できる。
『ブルーピリオド』全体を通して、矢虎が壁にぶつかってもめげずに楽しみながら努力できる根源は、この話にあると印象付けられました。