イジメを焦点にしたリアルな人間を描いた作品
人間の本質にある「イジメ」をテーマに、これ程までリアルに7巻で完結させた作者に感嘆する。耳に障害のある主人公西宮硝子のイジメを、もう一人の主人公石田将也のレンズを通して読者に見せる演出をしていて、読まれる人の中には、ある種のいわゆる善悪の根本である「人間の気持ち悪さ」に酔いがまわる為、ひとまず1巻読まれた後、嫌な気持ちにならなければ読み進める事をオススメしたい。ただし、最後まで読まれたら、きっとこんな気持ち悪い人間という生き物も希望があり、一つずつ勇気を出していけば、誰でも未来がみえてくるんだなとジワジワと感じられるはずである。まず、人間の気持ち悪さを一番感じてしまうキャラクターが、担任の竹内先生だ。見て見ぬふりや、相手や環境によりコロコロ変える、先生としての立場を絶対的に守る人間性が描かれているところに、少なからず誰しも経験のあることがあるだけに、竹内先生を否定しつつも歯がゆくなるところもまた人間というものを感じる。しかし、5巻で竹内先生の人間性の良さをリアルに、だが、さりげなく目立たなく、描かれているところも現実味におびている。また、両主人公の母親の言動、行動にも鳥肌モノだ。親の立場、目線からそれぞれの主人公を思いやり守りたいがために言い放つセリフに圧巻される。両主人公の母親の、1巻と最終7巻での活躍も見所のひとつである。