心に響く「絆」の物語
『フルーツバスケット』は、母親を事故で亡くした女子高校生・本田透が、十二支の物の怪憑きに縛られた草摩一族と交流していく中で本当の「絆」を問う物語です。何度読んでも発見があり、感動する作品です。
■この作品の3つの魅力
①人物描写が濃密であること
登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの生い立ちや性格など設定が緻密に作り込まれています。そのため、誰の立場に立っても感情移入できます。
物の怪憑きの呪いがあるために、さまざまな過去と運命を抱えて生きる草摩家の人たち、家族を亡くすが明るさを失わない透と透を見守る友人たち―。
一人ひとりの言動や想いに理由があり、読めば必ず好きになるキャラクターに出会えます。
また、読む時の自分の気持ちや状況によって、共感できる人物が変わることもこの作品の魅力です。
②物語の展開の面白さ
1巻から伏線が張られていて、読み進めていくうちにちょっとした台詞や場面にも大きな意味があることに気付きます。
十二支や呪いという一見ファンタジックな設定から生じる境遇や苦悩のつなげ方がリアルで、物語構成の秀逸さを感じます。
また、ところどころギャグが盛り込まれてあり、シリアスな話に彩りを添えています。
③心に残る言葉が多くあること
「どんな思い出もちゃんとこの胸に抱いて信じていきたい いつかそれすらも超えて尊い記憶となるように」など印象的な言葉が多く出てきます。
うまくいかないことを親や家のせいにしていたこと、拒絶を恐れていたこと、悲しい気持ちと向き合うことなど、つらい記憶を持つ登場人物たちだからこそ、紡ぐ言葉が心に刺さるのでしょう。
悲しい時やつらい時、強くなりたい時に寄り添ってくれる言葉がきっと見つかります。
■まとめ
奇抜な設定とそれに翻弄される多くの登場人物を描いた『フルーツバスケット』。
時を経て自分も変わっていくことで、前に読んだ時には登場人物の気持ちや行動に理解できない部分があったとしても、再読して分かることもあります。その時、この作品の奥深さ複雑さ、人の心の難しさとおもしろさを感じます。何度読んでも色あせない作品です。