ほとばしるような情熱が胸に響く。王道の女子サッカー物語
「さよなら私のクラマー」は、新川直司原作による日本のスポーツ漫画です。
女子サッカー部に所属する高校生たちが、日々鍛錬を重ね多くの強豪校に立ち向かっていく、その過程を非常に丁寧に、かつ情熱的に描いた作品です。
物語の舞台となるのは、蕨青南高校という埼玉県の公立校。
万年予選敗退を繰り返していた女子サッカー部「ワラビーズ」に、様々な事情を抱えた一年生たちが入部するところからストーリーが始まります。
中心となるメンバーは、周防すみれ、曽志崎緑、恩田希の3名で、サッカー技術はいずれも一級品。
同時に、いずれもが性格的に一癖も二癖もあって、それがチーム全体の強さに大きく影響を及ぼしていきます。
他人とコミュニケーションを取るのが苦手な者、天才的サッカーセンスを持ちながら、肝心なところでポカをかます者、さらには、その天才に憧れるがあまり空回りを繰り返す者など、他の部員たちも含め魅力に溢れたキャラクターが次々に登場します。
それは、対戦相手となるチームにおいても同様です。ライバルである彼女たちがサッカーを続けてきた中で、どのような挫折と栄光を味わってきたのかがきちんと描写されています。
それゆえ、読んでいるうちに相手チームのほうを応援してしまう人もいるかもしれません。
ワラビーズ面々の心情や行動は、その都度チームに悲喜こもごもの結果をもたらします。
しかし彼女たちが終始一貫して持っているのは、「強くなりたい。負けたくない」という王道のスポーツ精神。
その揺るぎないスピリットは読者の感情を揺さぶるに十分で、漫画を読んでいるだけなのにいつしかその手に汗を握らせます。
熱いストーリーながら、女子部員たちの軽妙な掛け合いが多くの笑いを誘うのも魅力のひとつ。
サッカー、ひいてはスポーツ漫画の傑作として読み継がれていく作品ではないでしょうか。