米津玄師の紡ぐ言葉
彼にしか紡げない言葉たちに、どれだけの人が救われてきたのだろうか。
2018年に発表された『Lemon』。
当時私は大切な人を亡くし、大きすぎる悲しみに押しつぶされそうになっていた。その折に、
偶然ラジオから流れてきたのが『Lemon』だった。
歌い出しを聴いた瞬間、「これはレクイエムだ」と感じた。
もちろん他の解釈を否定するのではない。
しかし、突き刺さるようでどこか虚ろな歌声に乗せられて届く言葉は、当時の私の心を慰めるには十分だった。
彼の作品には、いつもどこか虚しさが漂う。
例えば2014年発表のアルバム『YANKEE』に収録されている『WOODEN DOLL』では、明るい曲調と裏腹に、自分のことが嫌いなあまり愛してくれる人すら拒絶してしまうという「あなた」が登場する。
2017年発表のアルバム『BOOTLEG』収録の『Moonlight』は、暗い部屋にひとりでいるようなメロディに乗せて、「本物なんて一つもない」と歌う。
どんなに明るく振る舞っていても、人知れず落ち込むこともあるだろう。
そんな悲しみややるせ無さにそっと寄り添ってくれる。
彼の紡ぐ言葉にはそんな力がある。
きっとこれからも多くの人の心を救っていくのだろう。