リリーのすべて
この作品を見終わった後、ジェンダー問題を抱える人たちが満足に生きられる世界になってほしいと願わずにはいられませんでした。作品中の時代では技術的に性転換手術が難しく、主人公のリリーは手術によって亡くなってしまいます。しかしそのことよりも、女性の格好をして歩いているからという理由で男性二人から暴行を加えられたシーンはとても心が痛みました。
また、リリーの妻も、自分が旦那として・異性として愛していた人が、もう自分を女として愛してはくれないことを受け入れなくてはならず、深く傷つくのです。しかし、自分の愛する人の幸せを願ってリリーの背中を押す彼女は、本当に強い女性だと感じました。
リリー役の俳優アイナー・ヴェイナーさんが大変美しかったです。女性のしぐさや立ち居振る舞いなど相当研究したように思いました。前半の男性のシーンはすごく男っぽいのに女性の格好になるとたちまちエレガントになり、「役者さんはすごいな」と改めて感心してしまいました。
性転換手術の技術がいかに向上したとしても、ジェンダー問題を抱える人たちは周りの人間の偏見によりなかなか自分らしく生きることが難しいです。暴力をふるったり差別をしたりすることは明らかに許されない行為ですが、ジェンダー問題を抱える人が特に自分の身近な人であればあるほど、それを受け止めることは並大抵のことではないと感じます。