胸が苦しくなるけど、とても考えさせられる話
映画「戦場のピアニスト」は、第二次世界大戦下にナチスドイツがユダヤ人を迫害し大量虐殺する時代を、一人のユダヤ人ピアニストが家族との別れ、ピアノとの別れ、理不尽な殺人や暴力に直面しながらも何とか生き延びるという物語です。
ナチスドイツのユダヤ人迫害は負の遺産として有名な話です。それゆえに、観ていて心が苦しくなる場面や、目をつむりたくなるような場面が多くあります。理不尽な殺人や暴力などがリアルに描かれているので、そういう場面を観るのが苦手な人には辛いかもしれません。
オススメポイントは2つあります。
1つ目は主人公のシュピルマンを演じたエイドリアン・ブロディの演技です。
場面を追うごとに、ユダヤ人が置かれている状況の悲惨さがリアルに伝わる演技には圧倒されます。表情や歩き方、仕草まで本当にその時代を生きているかのようで、シュピルマン本人なのかと錯覚するような、惹き付けられる演技、というよりシュピルマンそのもの。
特に、シュピルマンが病に冒される場面でのブロディの演技には心が締め付けられました。痩せこけ、声も出ないほど弱り果てた姿が目に焼き付いています。本当に演技なのか?と疑いたくなるほどです。
ブロディはこの映画でアカデミー主演男優賞を受賞しています。
2つ目はドイツ陸軍将校ホーゼンフェルトがシュピルマンを救う場面です。
ドイツ軍はユダヤ人を迫害していたまさに当事者です。その当事者が最後の最後にユダヤ人を助けたのです。
街中が破壊され、孤立したシュピルマンが逃げ込んだ建物内で二人は出会います。そこでドイツ軍ホーゼンフェルトはシュピルマンがピアニストだと知り、ピアノを弾くよう促します。ピアノを聴いたホーゼンフェルトはシュピルマンを匿うと約束するのです。
ドイツ軍がユダヤ人を助ける。
シュピルマンのピアノがホーゼンフェルトの心に何かを訴えかけたのか、それともホーゼンフェルトは初めから殺さないつもりだったのか。観た人の想像に委ねられます。
映画「戦場のピアニスト」は、観る者の心に「生きていることは奇跡で尊いことではないか?」と問いかける作品です。