禅と骨 Zen and Bones

禅と骨 Zen and Bones

『禅と骨 Zen and Bones』(ぜんとほね Zen and Bones)とは、2016年に公開された、日米合作のドキュメンタリー映画。日系アメリカ人の禅僧、ヘンリ・ミトワの波乱に満ちた生涯を軸に、日本とアメリカをまたぐ移民史、宗教、戦争、家族の記憶といったテーマを描いた作品である。監督は『ヨコハマメリー』などで広く知られるドキュメンタリー映画の名手・中村高寛。日本では2017年に劇場公開されており、公開終了後はDVD化や各種配信サービスでの公開を通じて視聴が可能となっている。ドキュメンタリーでありながら、俳優による再現ドラマを大胆に取り入れている点が特異であるとして話題となった。本人や関係者の証言、記録映像といった事実の断片に、演出された映像を重ねることで、現実と虚構の境界を意図的に曖昧にする手法がとられ、その技術には多くの称賛が集まった。
「禅」という宗教的、かつ精神的なテーマを扱いつつも、作品は禁欲的な語りに留まらず、ヘンリ・ミトワの生涯を通して、欲望や金銭、性愛といった人間の生々しい側面を強く描き出している。聖と俗を行き来するミトワの破天荒な生き様と、第二次世界大戦期における日系人強制収容という歴史的背景とも深く結びついており、個人の逸話にとどまらず、20世紀の社会史そのものを体現するような構成が特徴となっている。

tw-12456054610107064338のレビュー・評価・感想

禅と骨 Zen and Bones
9

童謡「赤い靴」に我が身を重ねる反骨ハーフ禅僧の心の旅

戦争とさすらいの血に翻弄された、日米ハーフ天龍寺禅僧ヘンリ・ミトワの晩年に密着した作品。横浜生まれのミトワ青年は、米国へ帰国した父を探しに横浜港から氷川丸に乗る。渡米後太平洋戦争勃発、日系人強制収容所に抑留。戦後米国に留まり、日本に帰国したのは21年後。禅に傾倒し京都妙心寺へ身を寄せ得度、裏千家に出入りし陶芸や生け花に手を染める。時は経ち、京都に変わり者の僧侶がいると聞きつけた中村監督のカメラは、禅の道というよりgoing my wayな気分屋爺さんの日々をつぶさにとらえる。多感な時期に言葉もよく分からぬ日本に連れてこられた事が、ある意味未だトラウマとなっている次女との激しいいさかい、居合わせた長男長女も含め、日本語と英語のちゃんぽんなやり取りとなってゆくカオス的シーンが、観ているこちらの心にグサリと突き刺さる。
若き頃の再現ドラマ内でミトワ青年を演じるウエンツ瑛士の熱演も光る。奇しくも同様にドイツ系アメリカ人の父親を持つウエンツだが、長兄を演じたチャド・マレーンが仰天したほど当時は英語が話せなかったらしい。
「刑事さん、私には分かりません。私は日本で生まれた日本人です。」
バラエティ番組の時とも違う、素の状態の自分を出せたという。他には元芸者の姐御的な母親として余貴美子、そしてエンドロール時には横山剣歌う「骨まで愛して」となっている。
ヒトは何処からやって来て何処へ流れてゆくのだろう。そんな事を改めて考えさせられる、Yokohamaが通奏低音のようにゆるゆると根底に流れている作品。