ただのスポ根漫画ではない
『スラムダンク』はバスケットボール漫画である。主人公である桜木花道が赤城春子に振り向いてもらうためにバスケットボールを始めるところから物語はスタートする。特徴としては桜木花道以外の登場人物にも葛藤や苦悩があり、出てくる選手のエピソードが部活動やチームスポーツをしている人間には共感できるところにあると言える。
桜木花道がライバル視している流川楓には天才だからこその苦しさ、キャプテンの赤木剛憲(通称ゴリ)はリーダーとしての苦悩、三井寿には一度道を誤ってしまったことによる葛藤、宮城リョータにはコンプレックスを持つ者としての悩み。これら湘北高校だけでなく敵チームの選手や監督、もはや出てくる人物すべてに深い役割があるのがとても良い。
また、『スラムダンク』といえば漫画の終わり方も他にはない美しさがある。たいていのスポーツ漫画は優勝やラスボスに勝利して幕を閉じるが、『スラムダンク』は強敵山王工業高校に2回戦で激闘の末勝利するものの、次の試合で嘘のように敗北して終わる。また、主人公桜木花道が高校に入学してからの約半年間しか描かれずに終わるのである。このように短い期間の出来事をジャンプコミックス31巻にも渡って描かれていることで、ものすごく内容が濃い漫画ということが分かる。