生まれながらの差異をどのように受け止めるのか
動物を擬人化した物語。草食獣と肉食獣の対立が、高校という舞台で繰り広げられる。常に死と隣り合わせだが、堂々と肉食獣を非難できる草食獣。一方で、強い力を持つが、肉食という本能を押さえ込まれ、肩身の狭い生活を強いられる肉食獣。生まれながらの個性に振り回されなければならない世界。そんな理不尽な世界の中で、自分の生きる意味をなんとか見つけようともがく高校生たちの心の描写に引き込まれる。ハイイロオオカミである主人公のレゴシは、肉食獣の力を否定しようともがく。しかし、本能をそう簡単に捨てられるはずもない。矛盾を抱え苦しむうちに、自分の考えが本能から来るものなのか、それとも理性から来るものなのか、区別できなくなっていってしまう。それでも、自分のやりたいこと、出来ることをなんとか見つけ出して前に進み続けるその姿に、勇気を貰う人も多いのではないだろうか。誰もが一度は経験した、自分に対するコンプレックスや、自分が何者かわからないという葛藤を、上手く表現した作品になっている。生まれながらの差異による差別や生きづらさをどのように受け止め、乗り越えていくべきなのか。多種多様な動物を用いることで、この問いに対する様々な答えを示してくれる作品である。