信仰と報道ー真実が向かう行先
神父による児童虐待を暴いたボストングローブの記者たちを描いた作品。
カトリック信者にとって心の拠り所となる神父による児童虐待。その事実にも衝撃を受けるが、事件そのものを何年にも渡り、組織で隠ぺいし続けていた、というにわかには信じがたい目を背けたくなるような真の事実にはまさに「開いた口が塞がらない」状態。その規模の大きさに、劇中でその事実が明るみに出たシーンで記者たちが言葉を失くしたように、私もまさに言葉を失くし、吐き気すら覚えた。体験者の団体、SNAPの代表の「精神のレイプ」と訴える言葉、「priests...!」とつぶやくセリフが胸を貫く。
ボストン、というカトリック教徒が比較的多い地域で、その事実を知り、公表することの辛さ、難しさ。それでも真実を追い続けた記者たち。取材をしていく中で家庭やプライベートや、自らの信仰心をも犠牲にしながらも真実を追い続ける姿は、まさに記者とは、報道とは何なのかというその神髄を見るようだ。そして取材の中で見える様々な人たちのすべては、現代のアメリカ、カトリックの姿を浮き彫りにしている。
エンディング、記事となって世にで出たシーンは本当に爽快で、真実の反響は凄まじいものであったのだが、実はつい先日もペンシルバニアで70年にも渡る児童虐待が明るみになっている。まだ続いているのである。今カトリック教会は次々に起こされた裁判で破産が相次いでいる。私はこの映画をきっかけにボストングローブのネット版を定期購読している。スポットライトも健在で、この児童虐待も加え、さまざまな記事を提供し続けてくれている。この映画を通じて、キリスト教の人も、そうでない人も何かを感じてもらいたい。