弱い奴は食われる。北海道を舞台に繰り広げられる金塊争奪サバイバル
作品の舞台は日露戦争終結後、明治時代末期の北海道です。アイヌが残したといわれる金塊の在り処を巡って壮絶なサバイバルが繰り広げられます。サバイバルというと殺伐とした印象がありますが、本作は殺し合いのシーンばかりではなく、仲間との食事シーンや独特なギャグパートなどが組み込まれ、緩急のある作品に仕上がっています。作者の丁寧な取材に基づいて制作されており、アイヌの生活や料理・考え方なども作品を通して学ぶことができます。また、登場キャラクターたちが非常に魅力的です。それぞれの生い立ちや、内に秘めた思いが細かく描かれており、一度読み始めるとどのキャラクターも好きになってしまうこと間違いなしです。「弱い奴は食われる」は作品序盤でのセリフなのですが、本作の根底にはずっとこのセリフがあるような気がします。「弱い奴は食われ、強いものが生き残る」という考え方があるからこそ、殺し合いのシーンも悲壮感なく淡々とした気持ちで見られるのだと思います。自分の目的のために生き、戦う。非常に単純明快で、読むとスッキリした気持ちになれます。歴史・軍隊・アイヌ文化・グルメなどさまざまな要素が詰め込まれているので、読者の層が幅広く、男女関係なく楽しめる作品です。