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原曲を超越したメロディ・歌声の魅力
西城さんの魅力というのは、原曲のイメージ、コンセプトなどを遥かに超越したメロディ・歌声にあります。それを如実に示したのが代表曲『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』です。
そもそも西城さんの『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』というのは、1970年代にアメリカで一世を風靡した音楽グループ「ヴィレッジ・ピープル」の原曲をカバーしたものですが、ヴィレッジ・ピープルという音楽グループ自体がゲイを支持基盤とした音楽グループであり、原曲は分かりやすく言ってしまえば「ゲイの応援歌」であったため、当時アイドルのイメージに厳しかった周囲のスタッフからは「西城にこんな歌をカバーさせることができる訳がない!」と猛反対が起こったそうです。
にもかかわらず第10回日本歌謡大賞、FNS歌謡祭'79・グランプリ、第12回日本有線大賞・有線音楽賞を受賞し、オリコン1979年度年間7位の記録を獲得する辺り、原曲を超越する相当のパワーがあったことがありありと窺えます。綺麗事を抜きにして、音楽というのは国境もイメージも思想も関係なく、ただひたすら歌手が発する歌声、情念などが評価されるものだと痛感させられます。