ビートルズはみんなのもの
現代のイギリスだからこそ描ける、青春ドラマの傑作です。主人公がインド系の青年だけれど、ことさらエスニシティを強調するわけでもなく、イギリスの田舎町に住む一人の悩める青年として描いています。音楽が主体のミュージカル的な作品だと思っていましたが、実際には物語に焦点があてられた映画でした。もし、ビートルズがいなかったら、数々の名曲は人々に知られることはなく、それとともにある人々のつながりや思い出もなかったことになります。いくつか印象的なシーンがありましたが、特に二つ。一つは主人公以外にもビートルズを知る人物がいて、彼らが主人公を糾弾するかと思いきや、ありがとうとお礼を言うシーンです。音楽を模倣するのは決して正しいこととは言えないかもしれないけれど、彼らはそれを追求せずむしろビートルズへの音楽に対する愛と喜びを表現して立ち去ります。そこに感動しました。そしてもう一つのシーンは、この映画のクライマックスと言ってもいい78歳のジョン・レノンが登場するシーン。顔がそっくりで特殊メイクがよくできていて、もしビートルズが有名にならなければジョンは生きていたかもしれない…しかも幸せに、と思い胸が熱くなりました。全体的にとても見やすく、ダニー・ボイルらしいテンポの良さで観るものを飽きさせない青春映画です。