美しき世界を夢見るが残酷な世界だけを見続ける少年少女たち
残酷な世界を非道なほどに辛辣に描き切った作品です。
原作は漫画で、作者の少々荒々しいタッチが残酷な世界観を後押しし、緊迫した情景が上手く伝わってきます。
砦の中でしか生きられない人間と、人間を食らう巨人の長きに渡る闘いの話ですが、最初は巨人からいかにして生命を守るかに焦点が当てられていましたが、物語が進むにつれ、巨人側の歴史に触れ、砦の中だけしか描かれていなかった世界から飛び出し、とても広い世界に発展していきます。話が広がると破綻を来たすことがありますが、この作者にはそれが無いのが、何とも舌を巻くところです。一つの謎が更なる謎を呼び、ミステリアスな物語にどんどん深みが増して行くのです。
主人公であるエレンは、生死をかけた死闘を何度も繰り広げますが、仲間たちの協力により、生き延びる続けます。果たしてそれが、良かったのかどうかは、物語が進めば進むほどに分からなくなっていきます。より、残酷な世界を見聞きすることになるエレンたち、命を失っていく仲間たち、この世は美しいはずだと思い続けても、美しさに浸る時間を与えてはくれません。見る人を選ぶかもしれませんが、エンターテイメント作品としてかなりの大作と言えるでしょう。