カリスマと凡人
大友克洋のファンであれば必ず観ているであろう今作は、80年代の要素を残しつつも、とても未来的でサイバーパンクな雰囲気が漂う作品である。
「金田」というカリスマ的存在の少年と、対照的に平凡な少年「鉄雄」の2人を中心として物語が進んでいく。
金田という少年は、赤いジャケットを着て赤いバイクに乗る、暴走族のリーダーである。自信家でお調子者、女好きで仕方のない男だが、仲間の危機には率先して立ち向かう勇気と男気のある男だ。対して鉄雄は平凡で少し気が弱いが、己の中に野心のある男。そして金田に反発しながらも強く憧れている。
私たちの世界にも金田と鉄雄はいる。金田のような人間はこの世界にも一握りで、私たちはみんな「鉄雄」なのだと思う。
人は強いものに憧れ、羨み、嫉妬する。自分も「ああなれたら、あいつみたいに強ければ」と、常にそういうことを思っている。
AKIRAを観ていると鉄雄という人間の愚かさと愛おしさが芽生え、いつの間にか自分自身を鉄雄に投影してしまっていた。
AKIRAという力に壊れゆく人間の脆さと、大きな力を前にしても決して崩れない人間の強さの違いはいったい何なのだろうか。何度も何度も考える作品である。
映画版は原作とは少し違ったストーリーだが、世界観の作り込みもキャラクターの個性もアニメならではで、とても良い。
芸能山城組の民族的な音楽も作品に合っており素晴らしいと思う。