韓流ドラマというよりも海外ドラマに近い作品
韓流ドラマと言えば、日本の昼メロドラマのようにドロドロくどくどと男女の痴情のもつれを裏に感じずにいられない、そんなふうに感じて手を出せずにいる方が大勢いらっしゃるかと思う。
確かにそうだ。韓流ドラマと言えばそれこそが大きな題目であり、どのような皮を被っているか、主演の男優はあのナンとかナンとかだとかが注目されて、その内容は疎かにされがちである。
だがこの『梨泰院クラス』は、そういったものを毛嫌いする人にこそ海外ドラマの名作としておすすめできる一本となっている。その裏付けにNetflixで世界に発信されており、日本国内の総合TOP10に入らない日は無い。
軽くあらすじを紹介します。
主人公のパク・セロイは父の転勤により高校三年時に田舎の学校に転校することとなった。その学校ではいじめがあり、国内最大外食企業チャンガグループの御曹司、チャン・グンウォンによって男子生徒がいじめられていた。グンウォンによる執拗ないじめがある中、先生含むクラスの誰もが御曹司のいじめを見て見ぬふりをしていた。信念の強い転校生セロイは父がチャンガグループに勤めていながらもグンウォンを殴り、学校の校則にのっとり退学することとなる。
これが冒頭の数十分の内容になっている。転校生がクラスのいじめられっ子からいじめっ子を救うというありふれた展開だが、最終的には何とセロイは退学することになった。
これは主人公パク・セロイのキャラクター性がそうさせているのが画面から伝わって来る。主人公がどうするかはドラマにおいて重要な意味を持っている。当たり前かもしれないが、パク・セロイほどこのことを感じさせる主人公は多くは無いだろう。セロイにはこのドラマを通して一貫しているものがあり、そのために多くの苦労をする。冒頭の騒ぎの中ではセロイには学校生活を送れるチャンスもあった。
セロイがグンウォンを殴ったあと、セロイは校長室で父とグンウォンの父でありチャンガグループの会長であるチャン・デヒと対面する。チャン・デヒは息子に土下座をすることで事を治めようとするがここでセロイはデヒの提案を断った。そのことによりセロイは退学、父はデヒに自主退職を申し出て退職することになった。
パク・セロイは社交性には欠けているが、ここぞという時の信念や正義感は父に譲らずとても強く、それは自らの道をも閉ざしてしまうものお構いなしの不器用な側面もある。だが同時にそれがとても魅力的な主人公を形づくり物語を進めていく。
主人公のパク・セロイばかりに注目してしまったが、このドラマの仇役になるのがチャン・デヒである。こちらはセロイとは違った考えがあるが信念の強さではセロイにも負けず劣らず、チャン家のため、チャンガグループのためなら法さえも侵す度胸を持っている。
ここからパク・セロイとチャン・デヒの運命とも言えそうな因縁が始まる。
ここまででも十分に濃い内容と言える。メロドラマなんて吹っ飛んで夢中になれるだろうがまだそうでない人もいるだろう。安心してください。もう一つさらに驚く展開が後半にあります。
このドラマはエピソード1を見てしまったら最後、抜けられない沼に突き落とされ、先が見たくなってしまうポイントがいくつもあり、複線も膨大です。ドラマといえば少し臭い表現が多様されるものだと考えがちですが、『梨泰院クラス』はその緩急に優れた作品で、バードボイルまではいきませんが多くの人が見られるように調節された良作、海外に向けた名作ドラマだと思います。今回の紹介ではエピソード1の前半部分しかネタバレしていません。後半も含めエピソード16もある作品です。続きが気になった方は是非Netflixなどで視聴してください。
余談になりますが作品を通してどれも音楽が素晴らしく、特に『You meke me bake』(The Rose )をバックに実写映像をアニメ技法で表現したオープニングは飛ばせないぐらいに凄いものでした。