父親たちの星条旗

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父親たちの星条旗
9

「英雄」の悲劇

『硫黄島からの手紙』と対になる作品ですが、『硫黄島からの手紙』のエピソードをアメリカ側から描いたもの、というわけではありません。硫黄島に星条旗を立てる写真に写ってしまった、あるいは写っていることにされてしまったが故に、人生をかき乱された「英雄」たちの物語です。
生き残った三人が戦債の購入を勧めるキャンペーンにひたすら利用される場面、そして三人の中でも、そのことに特に心を痛めたアイラが心のバランスを失っていく場面は、ある意味無残な遺体の映像以上に目を背けたかったです。軍や国家を含め、大きい意味での権力の無慈悲さを感じました。特に張りぼての摺鉢山に星条旗を立てさせる演出は、あまりに無神経だと思いました。
また、戦争というものは敵味方双方の虐殺以外の何物でもないことを、改めて実感しました。幸い私たちは戦争を経験していないわけですが、だからこそこの作品のような戦争映画を可能な限り観て、戦争は二度と繰り返してはいけないことを、何度でも心に刻むべきなのだと思います。作中でも語られるとおり、「戦場を知らない者こそ戦争について語りたがる」のですから。戦争映画を観ることは疑似体験にもならないかもしれませんが、何も見ないよりはずっとましだ思うので。