究極のラブロマンス
「今夜、ロマンス劇場で」は、綾瀬はるか主演の映画です。奇想天外な設定なのに、中盤からロマンスに胸がキュンとなります。笑えて泣ける映画が観たい人にオススメの映画です。綾瀬はるかが演じるのは、白黒映画から飛び出したお姫様の美雪。また、美雪の演じるお姫様に恋心を抱き、美雪がスクリーンから飛び出すきっかけを作った青年・健司を坂口健太郎が演じ、晩年の健司は加藤剛が演じています。本作は加藤剛の遺作です。いずれも演技力に定評がある俳優ばかりで、序盤の奇想天外な設定も、違和感なく観ることができます。美雪はスクリーンを飛び出すにあたり、「人間に触れられたら消える」という定めを負わされていました。その定めは物語の中盤まで明かされないため、ただひたすらに気高いお姫様、という印象を受けます。そんなお姫様に振り回される健司の情けない様子が、笑いを誘います。ある日、2人は仲違いして、美雪は映画の世界に戻ることを考えますが、ついに自分の定めを健司に打ち明けます。その後、2人は一緒にいる事を決意します。肩を抱きたい時にも、触れ合うことができない。キスしたい時には、ガラス越しに唇を重ねる。手を繋ぎたい時にはネクタイを両方から持つ。そんなまどろっこしさが、綾瀬はるかと坂口健太郎の名演技で美しく表現されているのです。健司は着々と年齢を重ねていきますが、美雪はいつまでも若いままで、ついに祖父と孫娘という関係に見られるようになってしまいます。病床に伏す健司は、最後に美雪が長年欲しがっていた「色」を与え、美雪は最後に健司と触れ合うことを望みます。美雪が消えた朝、健司の命も尽きていました。究極のロマンスに快く泣ける映画です。