全員片思い!ハチミツとクローバーの世界
羽海野チカ先生の「ハチミツとクローバー」は美術大学生の5人を主要人物として描かれる恋愛漫画ですが、なんと全員片想い。しかも、全員三角関係、四角関係と複雑にキャラクター達の恋心が絡み合っています。最終的に好きな人と結ばれるのは1組なので、一言で語ってしまうとただただ悲しい物語のような気がしますが、読み終えた後は爽やかで、ああいい恋愛ができてよかったねと主要人物たちに語り掛けたくなる、不思議な魅力をもった作品です。なぜこうにも爽やかなのか。その理由の一つとしては、ただ恋愛の過程が描かれるだけでなく、片想いを通してそれぞれが成長していく過程が丁寧に描かれているからだと思います。
主人公の竹本君は4年間想いを寄せていたはぐちゃんに振られてしまうのですが、彼女の天才的な芸術の才能に触れたことで、平凡である自分と徹底的に向き合い最終的に納得のいく進路へ進んでいきます。就職先に向かうため、新幹線に乗って出発を待っていた竹本君をはぐちゃんが追いかけてきて、食パンを何枚も重ねた大きいサンドウィッチを渡すシーンがあるのですが、サンドウィッチの一層ごとに四葉のクローバーが入っていることに気づくシーンはハンカチなしでは読めません。