キラキラした学生生活の裏の葛藤と夢
羽海野チカさんの代表作の一つであるハチミツとクローバー。大好きな作品で今もたびたび読み返しています。
美大に通う若者たち(と周囲の大人)の青春物なんですが、クリエイティブな場所に集まる若者達の夢、葛藤、恋についての描写がたまりません。
主人公的存在の竹本佑太は、美大に入ったものの周囲のレベルの高さ、目的に向かう姿勢に圧倒され、迷いの中にいました。ある時、花本はぐみという女性が美大に転入してきて、一目ぼれ。そこから竹本佑太、花本はぐみを中心とした物語が動き始めるんです。
とびぬけた才能を持つも、なぜか留年を続ける森田、要領も良く勉強もできるが、ワケありの未亡人に片思いをしている真山、酒屋の娘であり真山を片思いし続けている山田、他の学校の先生方やデザイン事務所のスタッフたちもそれぞれ葛藤や想いを抱えていて、甘酸っぱく、はがゆい展開の物語です。
美大の中での物語で、時間も進んでいくので恋だけでなく、進路や就職に関するそれぞれの進み方、そこに共感するんですよね。物語前半は恋に関する描写が多いのですが、後半に行くにしたがって将来の事についての描写が増えるのもリアルですよね。
思いもよらない事件やきっかけで人は大きく変わる、そして夢が叶うことも叶わないこともあり、それを乗り越えて大人になっていく姿はいつになっても美しく感じます。