モブにも犬にもそれぞれの人生がある
大英博物館のマンガ展のポスターになっていたので、ずっと気になっていた作品でした。なぜナルトやワンピースなど、商業的にすでに成功している作品ではなく、ゴールデンカムイなのか、と。
私は漫画よりも先にアニメから入りました。冒頭は、男性主人公である杉元が日露戦争で戦っている場面から始まるので、明治の軍隊もの、バトル系なのかな、そして、アイヌの女の子が出てくるので、ヒーローヒロインものかな、と思いましたが、本作はそんな既存のジャンルには収まりません。
明治の軍隊ものではあるけれど、明治の北海道に駐屯する軍隊がどういう人たちの寄せ集めなのかというドラマが動き、バトルはあるけれども白黒善悪はもっと複雑で、軍人の話、ヒーローの話、というよりも、人間の物語になっています。二話、三話と見て行って、和人の男性である杉元が与えたり助けたりするばかりでなく、アイヌの女性であるアシリパさんに平等に与えられ助けられることによっても、この物語が型にはまらないものであることが分かってきます。
また、アニメ2エピソードくらいで死んでしまう人にも、生い立ちが語られ、その人の死が居合わせた登場人物の心情に爪痕を残していたことが後々になってわかることや、主人を亡くした猟犬にも新しい自己実現の道が後になって見つかるなど、作品の中で生きた時間が流れていることが分かります。