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真面目で面白い、ダンジョン図鑑
「このマンガがすごい!」「全国書店員が選んだおすすめコミック」など各賞で1位を獲得しているので既にご存じの方も多いであろう本作は、九井諒子による初の長編作品。現在もハルタにて連載中。
主人公ライオス一行はダンジョン内に残された妹を救出するため深部へと向かっていく。その道中で古典的ファンタジー作品に登場する様々なモンスターを、現実に存在する調理方法によって料理しながらダンジョンを踏破していくという、ファンタジー×グルメ漫画といった内容。
「ダンジョン」「モンスター」「冒険者」など、多くの人が想像しやすい王道テンプレートを使って展開され、見慣れない設定や入り込みにくい世界観は存在しない。だが、すべてのダンジョンにいるモンスター、トラップなどへのファンタジー内での合理的回答を用意しており、図鑑や資料集のようなある種の知識欲をも満たしてくれる堅実な設定は見事と言う他ない。
また、ハルタ作品らしい緻密でかつ抑揚に富んだ線で描かれる上、漫画として教科書にして良いような原稿の美しさ、構図のわかりやすさ、空白の使い方の巧みさは普段漫画を読まない層こそ驚くのではないか。
各種賞を獲得するにはそれ相応の理由が、人気の裏には面白さがあるということがわかる良書である。