蛍火の杜へ

saromechanのレビュー・評価・感想

蛍火の杜へ
8

知られざる名作短編アニメーション

人気アニメ夏目友人帳と同原作者・同スタッフによる短編映画。そのため、世界観や絵柄はそっくり。夏目友人帳が好きな人には是非見て欲しい作品。

「蛍火の杜へ」は、人間が触れると消えてしまう、妖と人間の狭間である存在の「ギン」と人間の女の子「蛍」の物語。人間である蛍はギンに触れられない。互いに惹かれ合うのに、触れることはできない。手を繋ぐこともできない。相手が泣いていても、頭を撫でて慰めてあげられない。それでも、確かに二人は繋がっていた。

行ったことがないはずなのにどこか懐かしい自然の背景に、温かい色合いの絵柄。「ああ、触ったら消えてしまう!」とハラハラするシーン。孤独だった優しいギンと、そんなギンに惹かれながら成長する蛍。その二人を包み込むBGM。そこからエンディングの儚さに涙が出るのは必然だろう。

以下、ネタバレである。

このエンディングに不満を持つ人もいる。だが私は、退屈な毎日を過ごしていたギンが温もりを知り、幸せを知ることができたという点で素晴らしい最後だと思う。
初めて見終えた後には悲しさしか残らなかったが、二度目の鑑賞時にやはりこれはハッピーエンドだと確信した。
なぜならギンは自分が消えると分かったとき、消える悲しさや恐怖は微塵もなく、蛍に触れられることへの嬉しさしかなかったから。
ギンが消えないというのはすなわち、永遠に二人は触れることができないという意味だった。あれでよかったのである。